出版社内容情報
劇作家兼大学教授の呉誠は鬱々として楽しまず、台北の裏路地に隠遁し私立探偵の看板を掲げるが、猟奇殺人犯の濡れ衣を着せられ……。
内容説明
劇作家で大学教授の呉誠は五十歳を前に妻に見捨てられ、鬱々として楽しまぬ日々。ついに教職を捨て、演劇界とも縁を切り、台北の街外れ臥龍街に引っ越して私立探偵の看板を上げる。初仕事をなんとかこなした素人探偵だったが、台北中を騒がせる六張犁連続殺人事件に巻き込まれ、自ら真犯人探しに乗り出すはめに!
著者等紹介
紀蔚然[キウツゼン]
1954年、台湾・基隆に生まれる。輔仁大学卒業、アイオワ大学で博士号取得。台湾大学戯劇学系(演劇学部)名誉教授。2013年、「国家文藝賞」演劇部門受賞。舞台演劇脚本二十数冊を発表
舩山むつみ[フナヤマムツミ]
東北大学文学部卒業、慶應義塾大学法学部政治学科卒業。日経国際ニュースセンター、在日本スイス大使館勤務などを経て、翻訳者。全国通訳案内士(英語・中国語・フランス語)の資格も取得している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
旅するランナー
263
台湾版トマス·ピンチョン(まあ、そんなに読んだことはないけど…)。自分自身や人生に嫌気が差した大学教授兼劇作家が、隠遁生活のために私立探偵になるところから始まります。そして、なんやかやあって、台湾を驚愕震撼させる連続殺人事件に巻き込まれます。主人公のウダウダしたネガティブな思考や、台湾文化とか連続殺人犯とか宗教とかに関する考察が、病みつきになってきます。台湾では出版済みの続編も楽しみです。2022/05/27
とん大西
142
ハードボイルド気取りのやさぐれ中年男。前職は大学で教鞭をとる台湾演劇界の重鎮。ある日、思い立ち、全てを断捨離。覚醒か凋落か、台北の片隅で私立探偵を開業した呉の七転八倒と東奔西走の捜査行。頁数以上に長さを感じたのは呉のクセ強めな自分語りが随所にみられたからか。ある意味「探偵物語」の松田優作とオーバーラップするようなオトボケとシリアスはこの物語の持ち味かもしれないが。驚愕のトリックがあるわけでもない。それでも、キャラだちしてて、雰囲気も悪くないだけに、やはりもっとコンパクトなら全体が締まって良かったかも。2021/09/01
seacalf
117
軽口叩きの探偵は大好きだけど、主人公の独白がまあ長いこと。冗長過ぎて閉口したが、作者は主人公と同じく演劇畑の人で、スランプ時に戯曲から推理小説という形で思いの丈を吐き出したのが本作ということ。むべなるかな。大学教授から一転した素人探偵の活躍だけでなく、台湾社会を内側から垣間見せてくれるのも見所のひとつ。厄落としに火を跨ぎ、猪脚麺線を食べるなんて描写があるけれど、知人の台湾人に聞いたら今の若い人はあまりやらないらしいので、台湾人論も含めて全ては鵜呑みに出来ない。とはいえ割と好きだったので次作も読んでみたい。2022/05/07
goro@一箱古本市5/5
112
妻とも別れ演劇界も離れ人と関わりたくないと言いつつも坩堝のような街で探偵稼業を始める元大学教授の呉。現代台湾の事情や呉さんの行き場のない憤りも含め楽しめました。一人になり切れず愉快な仲間が増えて行くのもこの街だからでしょうか。異色のド素人探偵登場!?いつの間にか連続殺人事件に巻き込まれ、ここから怒涛の展開で読み切らせたね~。しかしというかやっぱりというか、恋しちゃうんだよね。分かるわ~。第2弾も出ているそうだけどこの街から引っ越しちゃって愉快な仲間たちとはどうなっちゃうのか気になるなぁ~。2022/04/30
ずっきん
108
ひゃー滅法面白かった。人を救って自分を救う!元大学教授のインテリ呉誠が台湾の下町で私立探偵の看板を上げた。もー、二段組で喋る喋る。文体も人物もいわゆるハードボイルドじゃないからご注意。繰り広げる自説、散りばめる引用、台湾の生活臭。ミステリというより台湾社会小説の側面が強い。ああ、このおっさんがどんどん好きになる。台湾に行きたくてたまらない。冗長とかうざいとかのレビューが散見されるけれど、そこにこそこの小説の面白さがあると思う。楽しいと読み応えが両立する小説は存外少ない。続編の翻訳されるかな。是非読みたい!2022/03/04