感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
buchipanda3
99
使命が修了すると廃棄となってしまうヒト型AIロボット。その中の一人である彼女、和音(元の名はNo111)が観察した人の社会。AIの皆が同じ形の目、それがじっと何かを見つめる時の表情が印象的だった。田岡くん(元の名はNo100)も同じ目で観ていた。善意も悪意もなく、ただ無になって見つめたもの。感情を持たない彼女は人が怒ったり、喜んだり、悲しんだりする様を、いや、ただ生きている姿をキラキラ発光していると言う。そうかキラキラか。何だか素直に嬉しくなった。そう、リリィさんみたいに素直でいるのも良いことだと思った。2021/03/27
新田新一
37
こちらの心を見透かすような表紙の女の子の絵にまず惹きつけられます。この子は人間ではなく、AIです。和音という名前で喫茶店で働いています。数多く作られたAIが廃棄されるようになった近未来が舞台。池辺葵さんがSFをと驚いたのですが、静けさの漂う作風はこれまでの作品と同じでした。捨てられてしまったAIのことを思い、登場人物の一人がつぶやく言葉には、重みを感じました。どんなもので消費されて、最後は飽きられ捨てられていく現代の風潮に対する異議申し立てになっています。暗い話なのですが結末には救いがあり、ホッとします。2024/11/12
かさお
34
近い将来起こり得ること。A I人型ロボット〔人間と見分けがつかないレベル〕が増えすぎ人間の職が無くなるという理由で、余剰なAIは回収され他の動力に回される方針となった世の中。郊外のゆったりした片田舎街で、人間とA Iはまだ共存している。元監視カメラだった和音の目には、人間は発光している様に映る。セリフが余り無く、単純な線のイラストなのに、和音の大きな瞳と目が合うと、ドキッとしてしまう。私が感じる池辺葵の魅力は、押し付けがましく無い事。突拍子もない動きと無声映画のような静けさとの対比、じんわりくる。2023/10/01
ぐうぐう
31
人間の役に立つため開発されたはずのヒト型AI。しかし、道具として良くできているがゆえに人間の領域を侵すこととなり大量廃棄が始まる。元監視カメラのヒト型AI・和音の目を通して映し出されるのは、人間の営みだ。人間の都合で造られ、人間の都合で是非が決められ、人間の都合で捨てられるAI達。そんな身勝手な人間達を和音は、淡々と見続け記録する。そして、どうして彼らは発光するのかと考える。「だからヒト型はだめなんだ すぐに情がうつってしまう」という言葉が象徴するように、(つづく)2021/06/13
真朝
17
SFは苦手で何て書いたらいいのかよく分からないのですが、人間ありきなところが少し嫌に感じました。人間が造ったのだからしょうがないと思うけれど、本当に人間て我儘だなと思いました。 SFは苦手でも優しい絵と言葉に癒されるし、人間全て悪い訳じゃ無いのも描かれています。2021/04/10