出版社内容情報
6年ぶりとなる短篇小説集
内容説明
短篇小説は、ひとつの世界のたくさんの切り口だ。6年ぶりに放たれる、8作からなる短篇小説集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
951
村上春樹の新刊小説。8つの短篇を収録。一見したところは、作家自身の過去のそれぞれの時期を回想風に綴った小説に見える。それが「品川猿の告白」まで読み進めてきたところで、ふとそれまでの作品を振り返ることになる。誰がどう見ても、真っ赤なフィクションである品川猿がどうしてここに紛れ込んでいるのか。実体験を語ったかのような作品群も全くのフィクションだったのではないか?そうなのだ。「ヤクルト・スワローズ詩集」は幻だし、ビートルズのレコードを胸に抱きかかえた少女も、詐欺罪で逮捕された醜い女も実は存在しなかったのである。2020/07/31
starbro
716
私はハルキストでも村上主義者でもありませんが、村上 春樹の新作をコンスタントに読んでいます。本書は、バラエティに富んだ半分私小説的幻想短編集でした。オススメは、『石のまくらに』& 『品川猿の告白』です🐵 チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァを聴いてみたい♪ https://ddnavi.com/review/656391/a/2020/09/01
しんごろ
559
私小説的な作品ですね。良くも悪くも村上春樹作品な感じ。物足りないと言えば物足りないけど、これはこれでいいのかな。とりあえず村上春樹ワールドを味わえたから、良しとしよう。(もちろんハマった短編もある)要するに個人的には、つかみどころがない感じの短編ばかりなんだよね。読み終えて思ったことは、クラシックでもなんでもいいから、音楽を聴きながら酒を呑みたくなりました。こんなレビューですみません。2020/07/31
bunmei
541
『ノルウェーの森』以降、彼の作品はコンスタントに愛読しています。前作の『猫を棄てる父親について語る時』も含めて、これまでの作品のように、読む者をも置き去りにする予想だにしないファンタジー性や刺々しいほどの熱い情熱は、薄まってきた分、穏やかな中に哀愁さえ漂わせる、回顧的な文体になってきていると感じました。本作はきっと、彼のこれまでの人生の実体験や付き合ってきた女性をモデルにして描かれているのでしょう。チャーリー・パーカーやサンケイ・アトムズ、ビートルズ…は、自分にとっても懐かしく感じられるテーマでした。2020/08/19
tokko
522
現実と非現実との境目が不明瞭な作品群です。「一人称単数」というタイトルも「私小説」を意識してなのでしょうか。一度雑誌「文學界」で読んだものもあったのですんなり入っていけましたが、初期の短編に見られるような諧謔性はそれほど発揮されなかったのかな。2020/07/28