出版社内容情報
作家として政治家として活躍してきた著者も齢八十七を迎えた。忍び寄る死の影をも直視しつつ綴った珠玉の七編を収録した最新短編集。
内容説明
インパール作戦で多数の戦友を失った男が戦後にとった行動とは?(『暴力計画』)。死に直面する作家が自在なリズムで自己と対話する(『‐ある奇妙な小説‐老惨』)。末期患者と看護人の間に芽生えた奇妙な友情(『死者との対話』)。ある少女を襲った残酷な運命(『いつ死なせますか』)。切れ味の鋭い掌編の連打(『噂の八話』)。「これは私の一生を通じて唯一の私小説だ」(『死線を超えて』)。ヨットレースを引退した男の胸に去来するものは(『ハーバーの桟橋での会話』)。齢87を迎え、死と直面する自らをも捉える作家の冷徹な眼―珠玉の七編。
著者等紹介
石原慎太郎[イシハラシンタロウ]
1932年、神戸市生れ。一橋大学在学中の1955年に「太陽の季節」で衝撃的なデビュー。翌年、芥川賞を受賞。数多くの作品を執筆する一方、1968年に参議院議員に当選。後、衆議院に移り環境庁長官、運諭大臣などを歴任。1995年、勤続二十五年を機に国会議員を辞職。1999~2012年、東京都知事を務める。2014年、政界引退(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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川越読書旅団
24
死にまつわる7本の短編集。珍しく私小説も含めた、作者が抱く死生観をベースに描かれた作品群で、死にゆくことに対する石原氏の「らしい」思想がそこはかとなく伝わる。2020/08/02
りょうけん
7
<私> 日曜午後一気読み.もちろん面白いからだけれど,薄くてページ数も少なくてとても読む気が出てくる本です.読み応えの有る大作もたまにはいいけど普段はこういう読みやすい本のほうが良い.中身はかなり私小説に近い内容なのかと思っていたら,著者はこの本中の一作「死線を超えて」で初めて私小説を書いた.と言っているので僕はかなり驚いた. 2020/07/19
田中峰和
5
80も半ばを過ぎ、慎太郎は死ばかりを見つめている。13年の脳梗塞でペンが持てず一時期執筆を断念していたが、ワープロに切り替え再開。例の田中角栄自伝「天才」はベストセラーとなった。80代での売り上げ記録かもしれない。彼の死に対する口癖は「最後の未知、最後の未来」というもの。曽野綾子との対談集「死という最後の未来」でも90目前の二人で死について語り合う。この年齢の老人に文体云々を論じても可哀そうだが、「~したそうな」「~でしょうよ」「~でしょうが」と会話体の文章中に同様の語尾が多すぎる。日本昔話みたいで変。2020/10/18
CD
2
庶民を石ころくらいにしか思ってない人間の書いた本。このような高慢な上級国民を体現する作家は二度と出てこないかもしれない。貴重な資料。2023/03/07
plum
1
伊藤整「大胆で,素直」,牛島信「繊細な,優しさ」,石原慎太郎;虚無,海,ヨット,端正な日本語,一橋大学法学部社会心理学南博ゼミ2023/12/05