出版社内容情報
村上春樹が初めて自らのルーツを綴ったノンフィクション。中国で戦争を経験した父親の記憶を引き継いだ作家が父子の歴史と向き合う。
内容説明
時が忘れさせるものがあり、そして時が呼び起こすものがある。ある夏の日、僕は父親と一緒に猫を海岸に棄てに行った。歴史は過去のものではない。このことはいつか書かなくてはと、長いあいだ思っていた。―村上文学のあるルーツ。
著者等紹介
村上春樹[ムラカミハルキ]
1949(昭和24)年、京都市生まれ、早稲田大学文学部演劇科卒業。79年『風の歌を聴け』(群像新人文学賞)でデビュー。主な長編小説に『羊をめぐる冒険』(野間文芸新人賞)、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』(谷崎潤一郎賞)などがある。ほかに、短編集やエッセイ集など多くの著作や翻訳書がある
高妍[ガオイェン]
1996年、台湾・台北生まれ。台湾芸術大学視覚伝達デザイン学系卒業、沖縄県立芸術大学絵画専攻に短期留学。台湾、日本でイラストレーションや漫画を中心に作品を発表している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
587
仲が良かったとはいえない父上との幼いころの思い出と、父上の若いころの足跡をたどった、春樹さまの独り言のようなエッセイ集。「若いころ」限定なのは、彼が職業作家になって20年ほどはほぼ没交渉だったそうで。その辺の確執や、父上の最期に「和解のようなことをおこなった」経緯については触れられていない。「歴史があって今がある。自分が存在する」という、彼のユルくはあるが、強烈なメッセージ。そしてまた読者は置いてけぼりにされたまま、本を閉じるのである。2021/02/17
starbro
547
私はハルキストでも村上主義者でもありませんが、村上 春樹の新作をコンスタントに読んでいます。 何故今著者が、自身の父を語ろうとしているのか、良く理解出来ませんが、高妍のイラストも相まって、良い雰囲気の小冊子に仕上がっています。但し、この内容では、ベストセラーにはならないのではないでしょうか? https://books.bunshun.jp/sp/nekowosuteru2020/04/21
zero1
491
読めば春樹の作品世界が理解できる。村上が父について語る。父子の乖離と病院での見舞いですぐ思い出すのが「1Q84」の天吾。大きな溝ができた父に面会し和解しようとした。また「海辺のカフカ」でもギリシャ悲劇のような父と子の関係が出てくる。中国大陸での戦争については「ねじまき鳥」につながる。もし村上の父が戦死していたら。我々は彼の作品を読めなかった。戦争とは未来への希望を奪う悲劇の集まりだ。猫を棄てる話は映画「市民ケーン」を思い出した。人はどうでもいいようなことを忘れないものだ。歴史は過去のものではない。2020/05/02
ヴェネツィア
466
「僕」がまだ小学校の低学年だった頃。父親と一緒に夙川の海辺に猫を捨てに行った。このエピソードにはじまる、村上春樹による父親伝であり、その父親を回想する「僕」自身を語る。エピローグもまた家で飼っていた子猫に纏わるもの。プロローグの猫は、私たち読者をも「僕」とともに、望郷のような想いに誘うし、末段の猫は、ひしひしとした寂寥感に浸らせることになる。それは老境に達した村上春樹の諦念でもあり、自己と世界のあり方を、かくあるまま(あったまま)に受け入れていく姿である。それは、これまでも村上春樹が時々は折に触れて⇒2026/04/11
まこみや
372
すでに雑誌掲載時に読んでいました。この度単行本で発行されたのを機に再読しました。以前から村上作品の解釈として「父の不在」とその意味が一つの大きなテーマと言われていました。今回こうして村上さん自身が父の存在を見つめかえしたことで、今後の彼の作品がどのように変化するのか、あるいはしないのか、が注目されるところです。2020/05/05




