内容説明
この主人公、バカだろ。あなたはそう思うかもしれない。でもやがて途方もない悲しみが湧きあがり、あなたの心をかき乱す。これはそういう小説です。スタッカートする荒い文体と会話―戦争とドラッグと犯罪。破滅するしかなかった青年を痛ましく描き出す犯罪文学。
著者等紹介
ウォーカー,ニコ[ウォーカー,ニコ] [Walker,Nico]
アメリカ、クリーヴランド生まれ。2005年から2006年にかけて衛生兵としてイラクに派遣され、7つの勲章を受ける。しかし復員後にPTSDに苦しみ、やがて2011年に銀行強盗で逮捕され、複数の強盗罪で懲役刑に。デビュー作である『チェリー』は獄中で書かれた。2020年11月に出所する予定である
黒原敏行[クロハラトシユキ]
1957(昭和32)年、和歌山県生まれ。東京大学法学部卒。英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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harass
91
レビュで気になっていたがコロナ明けでようやく手に取れた。服役中の強盗犯の著者の自伝的小説。なんとなく大学にいくが中退してなんとなく軍隊に。イランに衛生兵で従軍後に除隊し、大学に戻るが、薬物依存はさらにひどくなり、強盗を繰り返し、破局まで。テンポよく語られるダメ人間と自覚する著者=主人公の語りはやや癖があるが、やるせない感情に彩られ面白い。手放しで称賛するまではないが読み応えのある海外翻訳小説だった。オススメ。2020/06/14
ずっきん
82
「俺、いい人じゃん? でも、すっげえクズじゃん?」イラクでPTSD、ヘロイン中毒から銀行強盗へと堕ちていく憎めないアホの自伝的小説である。プロローグがすっごくいい。そこに至った背景をとにかく知りたくて、読み続けるうちにどっぷり浸かってしまう。(ぶっちゃけ)稚拙な文章が走る走る。生々しく臨場感に溢れてる。したり顔の説教臭い大人をなぎ倒す。どんなアホの軌跡にだってドラマも理由もあるのだ。自伝でこんなの書いちゃうと、次のハードルがむっちゃ上がるよな。でも期待する♪ 訳が黒原さんというのも手に取った大きな決め手。2020/04/02
ヘラジカ
63
昨今の優等生アメリカ文学に皮肉を効かせた「近頃珍しい、文学講座の臭いがしない純文学作品」との評通り、着の身着のまま、あるいは剥き出しの文章がガンガン響くリアルな傑作だった。戦争文学でもあり、ピカレスクロマン的な犯罪文学であり、優れた自伝小説でもある。この作品の文章、言葉の端々に本物があることは、作者の境遇を知らずとも一読しただけですんなりと分かるだろう。2020/02/20
雅
60
イラク戦争ヘ。帰国後ヤク中になり銀行強盗に。ん〜…目標もヤル気も無い人間の姿は現代的。他人事では無い部分も。読み込んでしまった2020/08/28
Vakira
55
チェリーって童貞ちゃんの俗語。何でサクランボが童貞?語源を調べると元々は「処女」らしい。処女を失った時に出る血をサクランボの色に見立ててそう言われるらしい。って事でチェリー、「処女」は勿論、「初心者」とか「新人」って意味合いも。さてはこの話では「新兵」、成程。主人公イラク戦争の衛生兵となる。戦場物語?いやドラッグ小説。んんクライムストーリー?青春小説?カテゴリー分類出来ません。僕の感覚としては作者の純粋な態度で書かれた新しい形の純文学だ。主人公の行動は「何でそんなことするの?」って理解出来ない。コレコレ2020/08/31