内容説明
口減らしのため備中の港町・笠岡の「真なべ屋」に連れてこられた志鶴。潮待ち宿のそこでは、商人や仲買人たちがひっきりなしにやってきては、いずこかへ去っていく。おかみの伊都に支えられ、懸命に働きながら己の人生を見つめる志鶴の成長と、彼女の目を通して幕末から明治にかけての時代を描く連作集。
著者等紹介
伊東潤[イトウジュン]
1960年、神奈川県横浜市生まれ。早稲田大学卒業。『黒南風の海―加藤清正「文禄・慶長の役」異聞』(PHP研究所)で「第1回本屋が選ぶ時代小説大賞」を、『国を蹴った男』(講談社)で「第34回吉川英治文学新人賞」を、『巨鯨の海』(光文社)で「第4回山田風太郎賞」と「第1回高校生直木賞」を、『峠越え』(講談社)で「第20回中山義秀文学賞」を、『義烈千秋 天狗党西へ』(新潮社)で「第2回歴史時代作家クラブ賞(作品賞)」を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
195
伊東 潤は、新作中心に読んでいる作家です。備中笠岡の港町の旅籠を舞台にした女性の一代記、連作短編集の佳作でした。若い女性が主人公の時代小説なので、宮部みゆきのような雰囲気を醸し出しています。オススメは、『切り放ち』&『紅色の折り鶴』です。2019/12/07
とん大西
105
瀬戸内海を臨む船待ち宿【真なべ屋】。女将と手を携えて健気に働く志鶴。ときは幕末から明治へ。そして志鶴も少女から女性へ。変わりゆく時代と変わらない瀬戸内の情景と潮を待つ宿。小さな揉め事、大きな事件。その影で揺れ動く切ない心。地味ながら人情時代劇のエッセンスがしっかり詰まっていて安心の読み心地でした。第2話『追跡者』でアノ人物の登場はサプライズ。気が利いてますね(^^)2019/12/21
のぶ
94
読みやすく、面白い連作集だった。口減らしのため備中の港町、笠岡の潮待ちの宿屋「真なべ屋」に連れてこられた志鶴は現在14歳。そんな幼い少女をめぐる6つの物語。時代は幕末から明治初期。商人や仲買人たちがひっきりなしにやってきては、どこかへ去っていく。それぞれの話は、人情話やミステリーめいたもの他バラエティーに富んでいる。志鶴を通して世界を見つめる志鶴の姿が健気で感情移入しやすかった。おかみの伊都に頼っていた志鶴も徐々に成長し、これからの志鶴の人生に幸あれと思わずにはいられなかった。2019/11/16
タイ子
88
岡山県笠岡市を舞台に海を臨む旅館で働く少女の日常と成長を描いた物語。時は幕末から明治にかけての6つの連作短編集。口減らしのために奉公に出された志鶴、本当の娘のように対してくれる優しい女将。泊り客が盗賊であったり、石切り場での知り合いの転落死の真相解明に協力したり、ストーリーの中でミステリーめいたところもあって飽きずに読める。時代が進み港町も変化していく中で宿を守るべきなのか葛藤する志鶴にもたらした心の変化とは?心がゆったりするような風景を見せてくれるラストに笠岡の今を思う。2020/05/13
ゆみねこ
70
伊東さん初めての人情話。幕末から明治の備中笠岡を舞台に、潮待ちの宿娘・志鶴の成長譚。川井継之助登場がちょっと嬉しかった。2020/08/24
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