逆転の大戦争史

電子版価格
¥2,648
  • 電書あり

逆転の大戦争史

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ B6判/ページ数 728p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784163909127
  • NDC分類 209.04
  • Cコード C0098

出版社内容情報

ペリーによって砲艦外交の屈辱を嘗めた日本は「侵略は善」たる「旧世界秩序」を学ぶ。一九二八年に戦争が非合法になったとも知らず。ペリーによって砲艦外交の屈辱を嘗めた日本は

西周(にし・あまね)が、「侵略は善」たる「旧世界秩序」を学ぶ

朝鮮を併合した日本にしかし、満州国は認められなかった。

一九二八年に世界は大きく変わっていたのだった



「旧世界秩序」。戦争は合法、政治の一手段。戦争であれば

領土の略奪、殺人、凌辱も罪に問われない。しかし、経済封鎖は違法。



「新世界秩序」。戦争は非合法。侵略は認められない。

経済封鎖と「仲間外れ」によって無法者の国を抑止する。

が、どんな失敗国家も侵略されず内戦の時代に。



「パリ不戦条約」という忘れられた国際条約から

鮮やかに世界史の分水嶺が浮かびあがってくる。



序章 一九二八年という分岐点

パリ不戦条約の重要性は明らかに過小評価されている。これ以降、戦争は違法とされたのだ。一九二八年を起点として中世から今日までの世界史を見ると、鮮やかに世界秩序の分岐がみてとれる。



第一部 旧世界秩序



第一章戦争を合法化したオランダ人弁護士

戦争を合法にする理論は、十七世紀の東オランダ会社の社員の略奪行為を正当化するために、オランダ人の弁護士がまず考えた。その弁護士グロティウスは、本国の主権が及ばない範囲の戦闘行為は合法とした



第二章四五〇の宣戦布告文書を分析する

筆者は、一五世紀から第二次世界大戦に至るまで四五〇の宣戦布告文書を収拾した。妻を奪われたことを理由に戦争を宣言した神聖ローマ国皇帝から平和的解決ももたらしたカウンター・マニフェストまで



第三章殺しのパスポートをいかに得たか

平時では殺人は犯罪である。しかし、なぜ戦時では、それが合法となるのだろうか? 虐殺行為をしたアメリカ騎兵隊の将校を撃ち殺したスー族の男が、無罪となるまでをみながら、その論理の起源を考える



第四章経済制裁は違法だった

米国に赴任したフランスの大使ジュネは、私掠船を仕立て英国船をだ捕した。フランスは英国と戦争状態にあったのだ。が、米国領土内でこうした行為を許すことは米国は中立を放棄したことと見なされる



第二部 移行期

第五章戦争はこうして違法化された

第一次世界大戦の多くの犠牲者は、人類に考察を促した。シカゴの企業弁護士は戦争自体を違法化することを思いつく。やがてそれは、アメリカ大統領が多国間協定として提案するパリ不戦条約につながっていく。



第六章日本は旧世界秩序を学んだ

ペリーの砲艦外交で日本は旧世界秩序を苦渋のなか、学んだ。それを今度は朝鮮の併合に利用する。日清・日露戦争と旧世界秩序を利用しながら大陸に進出した日本は、パリ不戦条約の精神を揺さぶることになる。



第七章 満州事変は新世界秩序の最初の試金石だった

パリ不戦条約で侵略は違法になったはずだった。署名した日本はしかし、それを無視して満州国を「立国」する。「新世界秩序」を奉ずる国々は、日本に対する石油の禁輸措置などの経済制裁でそれに応じた。



第八章 新世界秩序の勝利

第二次世界大戦は、パリ不戦条約で、それまでの植民地支配を固定化する連合国と、侵略戦争によってそれを阻もうとする枢軸国との戦いだった。いわば「新世界秩序」と「旧世界秩序」の戦いだったのである。



第九章 ソ連を組み込む

拒否権とx事項にこだわるソ連と妥協をしてでも、国際連合にソ連を組み込むことは、戦後の大きな成果となる。チャーチルとルーズベルトは懸命の努力をする。一方敗戦国の憲法には戦争放棄の一文が入る。





第一〇章 ナチスの侵略を理論化した政治学者

カール・シュミットは、侵略戦争を非合法とみなす「新世界秩序」に抗して、ナチスの拡大政策を理論づけした学者だった。「新世界秩序」はしょせん連盟を軸とした、米・英・仏・露の権益固定化にすぎないと。





第一一章 ニュルンベルグ裁判の論理を組み立てる

どうすれば、ナチの戦争指導者を罪に問えるか? チェコの法律家は、パリ不戦条約に署名している枢軸国には、「旧世界秩序」下ではあった戦争時の殺人罪等の免責はない、ことに気がつく。





第十二章 戦争犯罪を個人の責任として裁く

裁判が始まった。原告側は、パリ不戦条約を援用し、戦争犯罪を個人の責任として裁く。それは「旧世界秩序」への弔鐘であった。ナチスの侵略戦争を理論づけしたカール・シュミットも逮捕される。





第三部 新世界秩序





第一三章 一九二九年以降、永続的侵略は激減した

一八一六年以降の侵略された土地の面積をグラフにしてみるとはっきりとわかることがある。それは一九二九年以降激減することだ。第二次大戦までに侵略された土地も、連合国はもとの持ち主に返したのだ



第一四章 国の数が増えたのには理由がある

戦争の違法化、征服の終焉、地球規模の自由貿易は、小国が存在できるだけでなく繁栄できることを意味した。「旧世界秩序」では植民地で調達した物資は、今では貿易で手に入る。植民地の独立が始まる。



第一五章 失敗国家の内戦

国と国との争いは、旧宗主国が領土線をあいまいなまま引き継いだことによって発生している。そしてもっとも深刻なのは、失敗国家ですらも侵略されないことから、内戦が新しい時代の戦争となったのだ。



第一六章 「仲間はずれ」という強制力

戦争が違法である「新世界秩序」では、「仲間はずれ」によって無法者国家を牽制する。アイスランドの自治にもちいられたこの方法は、ブッシュ政権も従わざるをえなかかった。イランの核放棄にも有効だった



第一七章 イスラム原理主義は違う戦争を戦う

イスラム原理主義の起源は、サイド・クトゥブというエジプト人にさかのぼる。一九四八年に米国留学したクトゥプは、アラブの神のために侵略戦争をすべきだとした。それが「イスラム国」に受け継がれる



終章 国際主義者たちを讃えよ

米国は、テロに対する「自己防衛」を理由にシリア、イラクの領土に空爆を実施した。国際連合憲章で、自己防衛の権利が認められるのは「武力攻撃」を受けた場合に限られる。「新世界秩序」は不完全なのか?

オーナ・ハサウェイ[オーナ ハサウェイ]
著・文・その他

スコット・シャピーロ[スコット シャピーロ]
著・文・その他

野中 香方子[ノナカ キョウコ]
翻訳

船橋 洋一[フナバシ ヨウイチ]
解説

内容説明

ペリーによって砲艦外交の屈辱を嘗めた日本は西周(にし・あまね)が、「侵略は善」たる「旧世界秩序」を学ぶ。朝鮮を併合した日本にしかし、満州国は認められなかった。一九二八年に世界は大きく変わっていたのだった。「旧世界秩序」。戦争は合法、政治の一手段。戦争であれば領土の略奪、殺人、凌辱も罪に問われない。しかし、経済封鎖は違法。「新世界秩序」。戦争は非合法。侵略は認められない。経済封鎖と「仲間外れ」によって無法者の国を抑止する。が、どんな失敗国家も侵略されず内戦の時代に。「パリ不戦条約」という忘れられた国際条約から鮮やかに世界史の分水嶺が浮かび上がってくる。

目次

一九二八年という分岐点
第1部 旧世界秩序(戦争を合法化したオランダ人弁護士;四五〇の宣戦布告文書を分析する;殺しのパスポートをいかに得たか ほか)
第2部 移行期(戦争はこうして違法化された;日本は旧世界秩序を学んだ;満州事変は新世界秩序の最初の試金石だった ほか)
第3部 新世界秩序(一九二九年以降、永続的侵略は激減した;国の数が増えたのには理由がある;失敗国家の内戦 ほか)

著者等紹介

ハサウェイ,オーナ[ハサウェイ,オーナ] [Hathaway,Oona A.]
イェール大学法学部教授。国際法が専門。米国国務省の国際法に関する諮問委員会の法律顧問を務める。2014年から15年にはイェール大学を休職し、国防総省の国家安全保障法の委員会の特別顧問を務めた

シャピーロ,スコット[シャピーロ,スコット] [Shapiro,Scott J.]
イェール大学法学部教授。法と哲学が専門

野中香方子[ノナカキョウコ]
翻訳家。お茶の水女子大学文教育学部卒業。主な訳書に『隷属なき道』(ルトガー・ブレグマン、ビジネス書大賞2018準大賞受賞)などがある。他訳書多数

船橋洋一[フナバシヨウイチ]
現代日本が抱える様々な問題をグローバルな文脈の中で分析し提言を続けるシンクタンクである財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブの理事長。現代史の現場を鳥瞰する視点で描く数々のノンフィクションをものしているジャーナリストでもある。主な作品に大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した『カウントダウン・メルトダウン』(2013年、文藝春秋)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

この商品が入っている本棚

1 ~ 1件/全1件

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

サアベドラ

22
1928年、史上初めて国家間の戦争を非合法化したパリ不戦条約と、それがもたらした国際秩序の変化を解き明かした大著。2人のアメリカ人法学者の共著。17世紀のグロティウス以来、国際社会は戦争こそが最終的紛争解決手段だった。それを禁じたパリ不戦条約は、当初はその構造的欠陥によりWWIIを防ぐことは出来なかったが、のちに国連憲章の礎となり、戦後の世界平和、すなわち戦争と領土変更の劇的減少に大きく貢献したという。法の持つ力とそれを作り出した法学者たちの努力。本書の内容すべてに承服するつもりはないが、非常に楽しめた。2019/02/01

Nobfunky

3
本文だけで約600ページ、ソースノートは120ページ以上の大著。とにかく欧米人は仕組み作り、ルール作りに励む。グロティウスが"力は正義"を背景に戦争を正当化する。勝手なものだ。でもタスカン・オタを無罪にするのだから筋は通っている。悲惨な第一次世界大戦を契機にレヴィンソンが戦争の違法化への道を開く。しかし辺境の国・日本はパリ不戦条約の1928年が分水嶺になっていることに気づかない。そして敗戦だ。その後も東西冷戦やイギリスの二枚舌などで、植民地は翻弄されるが、それでも独立し新世界秩序は構築された。(続く)2019/01/26

spike

3
大著だが根気強く読み進めると得るところは大きい。ただこの邦題はいただけない。なんせ原題はThe Internationalistsだし、れっきとした政治学かつ法律の力を論ずる本なので。2019/01/05

くろすけ

2
パリ不戦条約から何十年もかけて今の世界秩序にたどり着いた。条約違反した国に制裁を加えるには、かつては戦争を仕掛けていたが、今の秩序では仲間はずれが有効である。しかし、テロリストや内戦などには効果がなく、どのような形で、世界秩序を否定する主権国家に対抗するかは課題となっている。読むのに時間がかかったが、面白かった。戦線布告の分析やナチスの侵略までの経過を分析するなど、様々なアプローチをしていて退屈しない。2019/03/08

黒とかげ

2
こんなに参考文献の多い本を初めて読んだ。とにかく自分にとっては新鮮な視線からの歴史書。現代を生きる自分たちは昔のルールが適用されないことを神に感謝するしかない。だが万能な制度など存在しない。これから自分達がどういう選択をすれば良いのか、考えながら生きるべきなのだろう。2018/11/14

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/13132083
  • ご注意事項