出版社内容情報
四十五歳で初めて父になった彼が、謎だらけのこの世界で、娘とともに考え、悩み、笑い…。未知なる記憶をめぐる大冒険がはじまった!
内容説明
学校の先生になりたかった父と、キャンディ屋さんを夢見る娘。謎と矛盾だらけのこの世界で、もうひとつの本当を探し求めて、ともに考え、悩み、笑い…。未知なる記憶をめぐる大冒険がはじまった!演劇界の鬼才が描く、異色のドキュメント小説。
著者等紹介
飴屋法水[アメヤノリミズ]
1961年山梨県生まれ。状況劇場を経て、機械と肉体の融合を図る独自の演劇活動を展開。90年代は活動領域を現代美術の場へと移行。95年のヴェネチア・ビエンナーレ参加後に作家活動を停止。同年、「動物堂」を開店し、動物の飼育、販売を始める。2007年に「転校生」(作・平田オリザ)で演劇活動を再開。14年、いわき総合高校の生徒たちと校庭で上演した「ブルーシート」で第五十八回岸田國士戯曲賞を受賞。劇作、演出とともに、表現者としても数々の俳優や音楽家と共演し、その活動は注目を集め続けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
風眠
51
読み終わり、私の中にトンって置かれたみたいな、この何か。これは何だろう。とてもとても大切なこと、もうとっくに知っていること。けれどうまく言葉にできない、この感じ。自分が生まれる前も、生まれた後も、生きて、死んでいった後も、この世界は続いていって、そのことの不思議さに思いを寄せると気が遠くなるような。小さな娘(くんちゃん)と父親の法水さん。ふたりはいつだって、この世の不思議と対峙している。分からないことは、分からないと言える。その真摯さが潔くて、素敵で。けれど決して相手に押し付けはしない、その姿が美しくて。2019/01/25
rosetta
11
★★★☆☆55歳の父親が10歳の娘に命についてあれこれ語るエッセイ風小説(小説風エッセイ?)。古川日出男を思わせる文体と、とろこどころにさしはさまれる(作者自身が撮った?)本文と関連がありそうな無さそうな写真は安部公房みたいな体裁は嫌いじゃない。2017/09/19
つかほ
6
引き込まれる。子どもとの関わり、会話から生きること、死ぬことについての感覚が浮かんでくる。2019/07/28
sekimmer
3
〈間違うことを、全部やめることは、お父さんにはできない。それは、とても息苦しい。少しは、いつでも、間違っていたい〉〈くんちゃんには/失敗する自由がある。その権利があるんだ。だからお父さんは、その権利をくんちゃんから奪ってはいけない〉2018/07/21
三谷銀屋
2
父である「彼」と娘である「彼女」との記憶や会話を中心にして、文章は連想的に縦横無尽に飛躍する。彼、彼女の三人称が誰を指すのか、現実なのか幻想なのかを敢えて曖昧にし、時間軸も錯綜させることで、読者自身も彼または彼女にいつの間にか自己投影してしまうようなつくりになっている。父娘の会話は取り止めもないようでいて筆者の人生観を反映した深みを感じた。そして、そういう会話をする彼は彼女を決して子供扱いせず誠実に向き合っていることが伝わり、近すぎず遠すぎない距離感の親子関係はとても理想的に感じられた。2024/09/25