出版社内容情報
1両目が脱線し始めてから、最後尾の7両目が停止するまでの時間は、約10秒に過ぎなかったことになる。その10秒間に快速電車の車内で、乗客の一人ひとりが、どのような経験をしたのか、それは一人ひとりの人生を大きく屈折させることになった。(第一章より)
乗員乗客107人の死者を出した、JR史上最悪の惨事・福知山線脱線事故から20年。著者は事故調査に携わるとともに、遺族、重傷を負った被害者たち、医療従事者、企業の対応など、多角的な取材を重ねてきた。
脱線・転覆の10秒間に起きたこと、そのとき生死を分けたものは何か。
重傷を負った生存者にふりかかった様々な苦悩と、再生への歩み。
事故の真因と再発防止を求めて動いた被害者の努力が、企業を変えていく。
事故とは何か、人間と技術の相克の中で垣間見える「いのちの本質」とは――。巨大事故を問い続けてきた著者の集大成的ノンフィクション。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぐうぐう
35
JR福知山線脱線事故が起こって、今年で20年になるという。その20年は、被害者にとって、遺族にとって、哀しみと再生への20年だったのだろう。柳田邦男はこの機にあたって、事故を起こしたJR西日本を糾弾する以前に、被害者や遺族にとって、どのような20年間であったかを綴ろうとしている。ひとくちに被害者と言っても、乗っていた車両、場所、あるいはほんの小さな偶然の作用により、被害の大きさは異なっている。けれど、どの被害者も覚えるのが「なぜ自分がこのようなことになったのか」という疑問だ。(つづく)2025/04/22
michi44
3
阪神間に住む者にとっては衝撃的な事故だった。2025年で20年となるが、遺族や負傷者には苦難の年月だったんだと改めて思う。企業の責任は勿論だがその前に事故原因追及に重きをおいた被害者家族の対応は称賛に値すると思う。そして怪我の治療に関しては決して諦めてはいけないと言うのを学んだ。2025/04/30
chuji
1
久喜市立中央図書館の本。2025年4月初版。書き下ろし。柳田さんの集大成といえるノンフィクションです。JR福知山線事故発生時、オイラは築地に本社がある印刷会社に勤務しており、中央区役所の食堂で拉麺を購入する列に並びながらテレビのニュースで知ったことを思い出しました。この著作を読む前にはオイラの中でこの事件は風化していました。流石ノンフィクションの巨匠の著作です。2025/05/23
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