出版社内容情報
結婚の挨拶のため、故郷の雪之島に帰省した三十四歳の深雪。だが、婚約者は突然失踪……イヤミスの新旗手による最新サスペンス長編。
秋吉 理香子[アキヨシ リカコ]
内容説明
しまたまさん―雪之島の護り神。新潟本土の港からフェリーで約二時間、人口は三百人以下で信号機もない雪之島で生まれ育った深雪。アイドルを目指して故郷を離れたが、いまは夢をあきらめて東京の芸能プロダクションでマネージャーをしている。両親に結婚の挨拶をするために実家へ帰省したが、婚約者の俊亜貴は突然失踪…。「しまたまさん」に護られた島から、深雪たちは東京へ戻って結婚できるのか。イヤミスの新旗手が放つ、サスペンス長編。
著者等紹介
秋吉理香子[アキヨシリカコ]
兵庫県生まれ。早稲田大学第一文学部卒。ロヨラ・メリマウント大学院にて、映画・TV製作修士号取得。2008年、「雪の花」で第三回Yahoo!JAPAN文学賞受賞。2009年、同作を含む短編集『雪の花』でデビュー。その後、図書館司書として勤務するかたわら、『暗黒女子』を発表(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
355
秋吉理香子、初読かなと思っていたら、4年前に「暗黒女子」を読んでいたので、2作目です。300P弱一気読みしました。本書は、【女新堂冬樹+ホラー】といった感じです。もう少しホラー色を強めても良かったのではないでしょうか?いずれにしても、過疎の孤島はブラックにならざるを得ないのかも知れません。2017/03/28
おしゃべりメガネ
262
イヤミスの地位を着実に固めている秋吉さん作品です。タイトルからしてヤバい雰囲気がかなりキテますよね。ボリュームも相変わらず手頃な感じで読みやすさもバッチリです。他の作品に比べ、前半のスピード感がちょっとスロースタートな感じでしたが、中盤からの加速度はしっかりといつもの秋吉さんでした。適度?な後味の悪さも味わうことができ、秋吉ワールドにしっかりとやられてしまいます。雪国のとある島で繰り広げられる様々な'サバイバル'が、秋吉さん特有のヒヤヒヤ&ゾワゾワ感で書き綴られる展開は、やはり読み応え十分にありました。2017/04/28
風眠
247
ようするに自分が生きている環境に満足できているのか、いないのか、なのだと思う。都会であろうと田舎であろうと、メリットもデメリットもある。思い通りにいかない人生を環境のせいにしてしまう、そんな人間の弱さもわかる。それでも、生まれ育った環境に不満を持ちながらも愛着を持ち、安らぎを感じるのも人間だと思う。良くも悪くも、変えられない人間の芯のようなものはあって、それがその人を形成していくのだとも思う。思い通りにいかなければ、吹雪のせいにすればいい、「しまたまさん」のせいにすればいい。全ての罪は深い雪の下に隠して。2017/08/18
いつでも母さん
199
秋吉さんにしては物足りないなぁと感じてしまった。島の閉塞感は分かる気がする。多分あの男たちのその後を予想できてしまったからなのだろう。そうね、弥生ちゃんも冬に彼を連れて来ると良いよ・・幻想的な雪景色の裏では沢山の雪を集めて集めて雪室にするんだ。皆が幸せになるように、島の暮らしがずーっと続くように。その願いは『しまたまさん』が叶えてくれるさ・・静かにしずかにね。2017/02/13
🐾Yoko Omoto🐾
177
離島という隔絶された土地が生む閉塞感、夢も未来も感じられない嘆きや反発。そんな島への嫌悪から東京へ出た深雪が、婚約者を伴い数年ぶりに帰郷した。都会と恋人への盲目的な執着、捨てきれない故郷。その相反する深雪の感情に呼応して、不穏に波立つ周囲の思惑。そこでしか生きられない者が、そこ以外で生きたい者の願いを密やかに阻む。どんな手段を講じても決してこの島を捨てさせないという島民の執念は、善意かはたまた悪意か。逃れられないものに逆らい続けることは得策ではない、その諦念が生む島の狂った定石に底知れぬ恐ろしさを感じる。2017/03/31