象は忘れない

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  • サイズ B6判/ページ数 235p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784163904009
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

出版社内容情報

原発事故で失われた命。電力会社と政府の欺瞞。福島から避難した母子が受けた差別……。福島第一原発を題材に紡がれた連作短編集。

「なかったことには、ならない。」

「福島」が「フクシマ」になったあの日、原発に人生を奪われた。
だが、何としてでも生き抜いてやるーー。


【象は忘れない】
“象は非常に記憶力が良く、自分の身に起きたことは決して忘れない”(英語の諺)

あの日あの場所で何が起きたのか(「道成寺」)、
助けられたかもしれない命の声(「黒塚」)、
原発事故によって崩れてゆく言葉の世界(「卒都婆小町」)など、
エンターテイメントの枠を超え、研ぎ澄まされた筆致で描かれた五編。

著者プロフィール・柳広司(やなぎ・こうじ)
一九六七年生まれ。二〇〇一年『贋作「坊っちゃん」殺人事件』で朝日新人文学賞受賞。歴史や文学作品をミステリと融合させた『吾輩はシャーロック・ホームズである』『はじまりの島』『新世界』などの作品を発表。二〇〇九年『ジョーカー・ゲーム』で吉川英治文学新人賞と日本推理作家協会賞をダブル受賞。ほかに『怪談』『ロマンス』『虎と月』『ナイト&シャドウ』『ソクラテスの妻』など著書多数。

内容説明

あの日あの場所で何が起きたのか(「道成寺」)、助けられたかもしれない命の声(「黒塚」)、原発事故によって崩れてゆく言葉の世界(「卒都婆小町」)など、エンターテインメントの枠を超え、研ぎ澄まされた筆致で描かれた五編。

著者等紹介

柳広司[ヤナギコウジ]
1967年生まれ。2001年『贋作「坊っちゃん」殺人事件』で朝日新人文学賞受賞。2009年『ジョーカー・ゲーム』で吉川英治文学新人賞と日本推理作家協会賞をダブル受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

starbro

201
柳広司は新作中心に読んでいる作家です。東日本大震災、原発(フクシマ)をテーマにした連作・短編集、一気読みしました。フィクションでありながらノン・フィクションのようなリアル感、怖さも感じられホラーのような気もしました。中では「3匹の子豚」が印象的な「道成寺」がオススメです。 そう言えば、アガサ・クリスティーにも同タイトルの作品がありました。2月はこちらで読了です。2016/02/29

ちょろこ

153
叫びが詰まっている一冊。10年前のあの日。目に見えない悪魔、人の手に負えない悪魔が暴れ出した。当たり前の日々、美しき故郷がいとも簡単に悪魔だけでなく国、人にも奪われた叫びが恐怖が痛いほど詰まっていた。随所での叫び、言葉が心を鋭い針で突き刺していく。国はあの原発事故をなかったことにしたいのではないか…真偽はともかく、その言葉が一番突き刺さった。あれからまもなく10年、まだ10年。絶対安全神話、想定外なんてもうあり得ない。負の遺産を現在進行形で受け止め続ける大切さ。わかったふりは許されない現実を見た気分。2021/02/09

ケンイチミズバ

152
原発建屋が爆発した。絶対に起こらないと言われたことが起きた。何もなかったかのように振る舞えば何もなかったことになるのではないか。おそらくあの日そこにいた人たちの頭に一瞬過ったかもしれない気持ちの代弁だろう。しかし、津波からは逃れられてもここじゃだめ、もっと遠くまで非難しなくてはと言われ救助作業をやめるのか、瓦礫の下から助けての声が。私たちは収束したと思っているがほとんど知らない。危険なものは首都圏から遠く遠くに。米軍基地も原発も産廃処理施設も近くに来たら迷惑だが自分が嫌なものは他人も嫌なんだとは思えない。2020/02/25

ケイ

127
柳広司が描こうとした童話か民話だと思った。緻密な計算された作品を書く人が、武骨でブツ切れの剥き出しの文章を並べている。登場人物たちは皆、茫然自失の中、思考が止まったようになって、なぜだなぜだと怒りながら叫ぶ。悪いのはみんなだとわたしは思う。電気をこうして使い続けている私達。あの後、どうしたら、使用する電力を最小限で暮らしていくけるかと努力し続けている?新しい家電はどんどん出てきて、買う人はたくさんいる。責めてだけいては進めない。各自が小さくても出来ることを。私はそう思う。2017/03/11

ちゃちゃ

126
「人は未来に後ろ向きに入っていく。目に映るものは過去の景色だ」扉の言葉の示唆するものが心に重く響く。本書は、3.11後にフクシマで起きたことを、物語の力を借りて様々な立場の人の視点から伝えた短編集。時の経過とともに記憶の風化は進み、政府や電力会社は巧妙にそれを促して「復興」を強調する。原発事故で安全神話は崩れ、これほど多くの犠牲者と甚大な被害を出したにも関わらず、私たちは忘れることでまた同じ悲劇を繰り返すのか。未来に向かって歩き出す、その前に「過去の景色」を心に刻もう。忘れぬように、何度でも、鮮明に。2020/03/10

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