出版社内容情報
野球部を引退したばかりの渓哉は未来を前に立ち竦んでいた。モラトリアムの季節を前にした高校生の逡巡を丹念に描く、傑作青春小説。
誰のことより、自分のことが分からない
野球部を引退したばかりの渓哉は未来を前に立ち竦んでいた。モラトリアムの季節を前にした高校生の逡巡を丹念に描く、傑作青春小説。
内容説明
野球部を引退したら、空っぽになってしまった渓哉。故郷美作を出て都会の大学に行けば、楽しい生活が待っているのかもしれない。でも、それは自分が望んでいることなのだろうか。親友の実紀は、きちんと自分の将来を見据えている。未来が見えずにいる渓哉は、ある日偶然、道に迷っていた美しい女性・里香を案内することになる。里香は美作に「逢いたい人がいる」と言うが…。モラトリアムの時期を迎えた高校生の焦燥、そして淡い恋を描く、心が澄み渡る青春小説。
著者等紹介
あさのあつこ[アサノアツコ]
1954年岡山県生まれ。青山学院大学文学部卒業。小学校講師ののち、作家デビュー。『バッテリー』で野間児童文芸賞、『バッテリー2』で日本児童文学者協会賞、『バッテリー』シリーズで小学館児童出版文化賞、『たまゆら』で島清恋愛文学賞を受賞。児童小説からヤングアダルト、一般小説でもミステリー、SF、時代小説などジャンルを超えて活躍する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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あすなろ
107
十代に返るのは面倒くさい。確かに面倒くさい(笑)。自分が自分を持て余し、時には抑えきれない、訳の分からない衝動に突き動かされて動いている感覚はやはり十代独特のもの。それが段々薄れていく。あさの氏のこの中編には、美作の緑茶の薫りと共に、そんなことを思い出させてくれた。現代の話であるが、高校時代に貪り読んだ井上靖氏の作品を何故か思い起こされた。2015/12/16
nyanco
96
最後の夏が終わった高校球児の夏。名門校でもないし地域大会での敗退、でも中高とずっと続けてきた野球が無くなってしまった自分にはポッカリと穴が開いたよう。補習を受け、大学進学を目指すが、自分が何をしたいのかが見つけられない。自分を同じだろうと思っていた親友には、きちんと未来への展望がある。自分は何者なのか、何を目指せばよいのか…、あさのさんらしく、青春の描き方はとても巧い。出逢った美しい人は兄のかつての恋人だった。続→2015/12/31
みかん🍊
91
野球部を引退した夏、進学の為に補習には通ってはいるが自分の目標が見えなく虚無な日々を過ごす鶏哉、年の離れた兄に対する憧れや嫉妬、将来への不安、仄かな恋心、いかに自分が子供が思い知らされる出来事、碧い夏のひとときを岡山美作市の美し風情と共に描かれた透き通った風が吹くような美し作品です。別々の夢をお互いが叶えるためには一緒に居られない大人の恋もある。「バッテリー」のような幼馴染との関係もいいい、10代は確かに面倒臭い。2016/01/21
Ikutan
76
あさのあつこさんらしい一冊ですね。高校卒業と同時に自分の将来を考えないといけない地方の子どもたち。故郷への思いもあり、将来への不安や迷いもあり。部活引退後、空っぽになってしまった主人公と自分の道を決めた親友。そして地元に帰ってきて父親のあとを継いだ兄。10代のピュアな視点で描いた、将来への不安や迷い。故郷のこと。恋愛のこと。テンポのいい会話や文章でさらっと読めます。心地よいお茶の香りと舞台となった美作の美しい描写。あさのさんの故郷愛がいっぱいですね。あっさりとタイトル通り爽やかな青春小説でした。2015/12/26
はる
70
瑞々しくも切ない青春小説。岡山弁が心地良い。若者がお国言葉を使う小説って好きだ。ただ主人公の少年が何だか良く分からない。妙に老成した感じで若々しさが無い。彼が語り手なのだけれど、野球部の18歳の男の子はこんな文学的な思想じゃないよね。そういうところに違和感を感じてしまい、あまり物語に入り込めなかったです。2019/01/09