出版社内容情報
幸せな家庭を築きながらも、ひとりの女を愛し続けた父が死の前に歩んだ四国遍路の道。足跡を辿った娘が見たものとは。
企業戦士だった父のもうひとつの顔――傑作長編
幸せな家庭を築きながらも、ひとりの女を愛し続けた父が死の前に歩んだ四国遍路の道。足跡を辿った娘が見たものとは。
内容説明
四国遍路を終えた帰路、冬の海に消えた父。企業戦士として家庭人として恵まれた人生、のはずだったが…。死の間際、父の胸に去来したのは、二十年間、愛し続けた女性のことか、それとも?足跡を辿った次女が見た冬の光とは―
著者等紹介
篠田節子[シノダセツコ]
1955年東京都生まれ。東京学芸大学卒業後、東京都八王子市役所勤務を経て、90年『絹の変容』で小説すばる新人賞を受賞し作家デビュー。97年『ゴサインタン―神の座』で山本周五郎賞、『女たちのジハード』で直木賞、2009年『仮想儀礼』で柴田錬三郎賞、11年『スターバト・マーテル』で芸術選奨文部科学大臣賞、15年『インドクリスタル』で中央公論文芸賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
341
いやぁ、いい作品でした。篠田さんの書く小説は、ときによってヤヤこしすぎるきらい(実際この作品の主要登場人物の女性のひとりが、そういうタイプ)があるのですが、これはよかった、優しかった。視点がくるくる変わる中、ミステリーを解いてく仕掛けになっているのも楽しい。ここ数年読んだ篠田作品中では、自己ベスト。2017/12/01
starbro
193
篠田節子はインドクリスタルに続いて、2冊目です。読み始めは、「火宅の人」+「東日本大震災」かと思ったのですが、骨太の家族小説でした。女系家族だと父親は辛いものがありますが、娘に愛されており、結果としては幸せだったのかも知れません。ラストの美しい情景がタイトルにつながり、とても悲しいですネ。2015/12/16
yoshida
165
とある男の一生が描かれる。彼はお遍路に行き、帰りのフェリーから転落し自殺する。残された妻子から見た彼は、長年の不貞で家族を裏切り続けた酷い父親であった。実際に彼が考えて歩いて来た人生が描かれる。確かに不貞はあった。だが、その内面は妻子から見たものては異なる側面もある。つまり誤解や曲解もある。人間はお互いを真に理解することは出来ない。だからこそ、理解して貰おうと努力すると思う。彼は理解を得る努力を怠ったかもしれない。しかし、彼なりの精一杯の生き方だったことを読者は知る。それを否定する権利は誰にもないだろう。2019/05/14
いつでも母さん
139
昨日から読み始めたのだが、正直何を言いたいのか分かりきれぬまま消化不良で読了。家族を裏切り自殺した父と父の想い人そして、母と娘達。5人のその時々の気持ちに同化しつつも違和感は拭えず、そこに震災を絡めてからのお遍路は、詰め込み過ぎじゃないですかね・・お遍路で出会った人妻との一件も必要ない感じがした。妹が父の亡くなった跡を辿り、自殺では無いことが分かり?家族は安心したのかもしれないが、父と想い人の事は消しようもなく又、父とて結局は想い人に振り回された人生では無かったのか?冬の光、光の後ろには影が有るのみか。2015/12/08
とん大西
131
読友さんのレビューに惹かれ著者初読みです。突き放した感じの文章展開が良かったです。猛烈社員として奮闘した富岡。家庭には良妻賢母の美枝子と立派に育った娘二人。恵まれた人生の一方で20年に及ぶ不倫は学生時代の残像を愛でるような付かず離れずの歪な慕情。人生の混沌に終止符を打つ為に出た四国遍路の旅路の涯で-。…俗っぽくて自己中。ただ剥出しの生々しさが愚かで憐れで心底嫌いになれません(男目線ですが(^_^;)。共感や嫌悪はあっても肯定否定というのはなく…。彼の人生を思う彼、父の人生を思う娘。只只、ひたすら儚いです。2019/05/19