長いお別れ

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  • サイズ B6判/ページ数 263p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784163902654
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

出版社内容情報

遊園地で迷子、消える入れ歯――日々起こるユーモラスな不測の事態、そして最期まで保たれた愛情。認知症の父親と一家をめぐる物語。

帰り道は忘れても、難読漢字はすらすらわかる。
妻の名前を言えなくても、顔を見れば、安心しきった顔をする――。

東家の大黒柱、東昇平はかつて区立中学の校長や公立図書館の館長をつとめたが、十年ほど前から認知症を患っている。長年連れ添った妻・曜子とふたり暮らし、娘が三人。孫もいる。

“少しずつ記憶をなくして、ゆっくりゆっくり遠ざかって行く”といわれる認知症。ある言葉が予想もつかない別の言葉と入れ替わってしまう、迷子になって遊園地へまよいこむ、入れ歯の頻繁な紛失と出現、記憶の混濁--日々起きる不測の事態に右往左往するひとつの家族の姿を通じて、終末のひとつの幸福が描き出される。著者独特のやわらかなユーモアが光る傑作連作集。

内容説明

帰り道は忘れても、難読漢字はすらすらわかる。妻の名前を言えなくても、顔を見れば、安心しきった顔をする―。認知症の父と家族のあたたかくて、切ない十年の日々。

著者等紹介

中島京子[ナカジマキョウコ]
1964年生まれ。2003年、田山花袋『蒲団』を下敷きにした書き下ろし小説『FUTON』で作家としてデビュー、野間文芸新人賞候補となる。2010年『小さいおうち』で第一四三回直木賞を受賞、2014年山田洋次監督により映画化される。同年『妻が椎茸だったころ』で第四二回泉鏡花文学賞を受賞。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

yoshida

495
認知症をアメリカでは長いお別れという。少しずつ記憶を失くし、ゆっくりゆっくり遠ざかって行くから。東家の家長である昇平が認知症を患ってからの10年を描く、東家の物語。昇平は妻と二人暮らし。娘は三人いるが家を出ている。少しずつ記憶を失くし、言葉も出なくなる昇平。支える妻の曜子。非常にリアルに描かれる老老介護の現実。あまりに高額で、気の遠くなるほど長い順番を待つ介護施設。私の両親も六十代後半。自分のことのように読んだ。妻の曜子の献身的な姿に感動する。誰しもが将来起こりうる事柄を、美化せず現実的に切り込んだ力作。2017/02/19

Yunemo

484
「ロンググッドバイ」ですか。まさにその通りの10年間。妻曜子さんが素晴らしい。ほんとに介護期間の長さに、現実的にはできないことのほうが多すぎて。少しずつ記憶をなくして、ゆっくりゆっくり遠ざかって行く、この感覚って自身に置き換えられません。でも間違いなく来る未来に、この家族の温かさをじっくりと味わえました。毎日、変わっていく姿を見ている妻曜子さん、この心情が何とも言えずに。ほんわかとした温かさとあまりに切ない現実、この感情が自身の身に沁みます。暗い気持ちにならず、やさしい気持ちのまま読了、これがよかった。2015/07/26

なゆ

349
なんかもう、とてもとても切ない話。認知症の夫、支える妻、戸惑う娘たち3人。わりとユーモアに包まれてドライに描かれているので、すらすらと読める。はじめは一番あてにされてる次女の気持ちで読んでた。親がこうなった場合、と。それがだんだん妻曜子の気持ちで読んでた。はたして自分たち夫婦がこういう時期になった時、曜子さんのようになれるのだろうかと。妻の言葉から、本当はもっともっと大変な時もあるのだとわかる。けれど、夫婦の間の言葉にできない繋がりみたいなものにハッとさせられたりもする。なんだか思いがけず泣かされました。2015/10/02

めろんラブ 

305
認知症を患ったある男の十年と、彼をとりまく家族の物語。中島さんの実父が同病だったこともあり、仔細な描写が鮮やかで、まるで彼らの十年が実在するかのようだ。本書は声高に悲劇性を煽らず、”病は日常に溶け込む”というスタンスで、喜怒哀楽を織り交ぜた暮らしの息遣いを見事に謳い上げている。人間や人生を、知性・理性をもって肯定的に捉えようとする方法のひとつにユーモアを挙げるとするなら、中島さんはまさにそれの権化。上品なユーモアが嬉しい。自らの介護経験をこのように昇華させる手腕に、もう何度目かの惚れ直し。2015/07/24

Tui

278
認知症の在宅介護の現実。とぼけた雰囲気の初期症状からはじまり、次第に日々の生活を維持することが難しくなる「長いお別れ」。一抹のユーモラスさがあり続けるのは救いだ。介護・医療サービスについて、丁寧な取材がなされていると感じる。ただ、思う。主人公に献身的な妻がいて(住む場所も生活スタイルも異なるが)三人の娘がいる。この設定だからこそ、在宅介護の姿をありありと描けたのかなと。実際のところ、介護における男性の関わりは、女性と比べるとかなり薄い(かややこしい)。介護の現実と暗黙のジェンダーについて、考えさせられた。2016/12/03

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