起き姫―口入れ屋のおんな

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  • サイズ B6判/ページ数 308p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784163901886
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

出版社内容情報

夫の浮気で離縁したおこうが、向かったのは元乳母の切り盛りする口入れ屋の三春屋。やがて女主人として人と人との縁を結んでいくが。

大店からの離縁を機に口入れ屋の女主人へ!
名手が描く江戸の人情模様――。
もつれにもつれた夫との離縁話の原因は、そもそも二人に子供ができないことだった。大店の金物問屋「金長」に望まれて嫁いだおこうだが、夫・富之助はあろうことか浮気相手である別家の娘・おけいとの間に男児まで生す。別嬪だが滅法気の強いおけいは、赤ん坊を連れて家へまで乗り込み、挙句、おこうは婚家を離れる決心をした。
しかし、水菓子問屋の実家に戻ってもおこうに安息は訪れない。兄は裏で年上女房が指図したのか商い拡張のため、亡き父がおこうのためにかつて用意した200両の持参金――離縁によって独り身のおこうの手元に戻った命金を貸せと迫る。貸したら最後、きっとその金は戻らない。揉め事にほとほと嫌気がさした時、思い出されるのは自分を可愛がってくれた元乳母のおとわのことだった。
13歳で別れたおとわの行方を捜そうと父の代の店を支えた番頭を訪ねると、おとわは奉公人の周旋や仲介などをする口入れ屋「三春屋」を開いているという。同時におこうが先代の旦那、つまり自分の父との男女の仲だった過去を聞かされて戸惑うが、正月、おこうはおとわに会いにゆく。十余年ぶりに会うおとわは、病で寝込んでいた。聞くところによると年末にだいぶ血を吐いたのだという。そこでおこうは相談を持ちかけた。
「ねえ、あたしを三春屋で雇ってくださいな。お願いします」
雇い人と奉公人の仲立ちをして話をまとめるのが口入れ屋の稼業、人様と人様の縁を結ぶものだといっても、時にはお妾の周旋をすることもあるこの仕事は、お嬢様育ちにはとても無理だとおとわは断るが、「小さいときから弱虫のくせせいて強情っぱり。言い出したら後へは退かない」のに根負けし、おこう三春屋に落ち着いた。
一年半後おとわは逝くが、おこうは三春屋の女あるじとして、己の美貌を武器にせず女中奉公を希望するお島(「夕すずめ」)、生き別れの息子と再会したおはま(「去年今年」)、妾奉公を希望するお雪(「夜長月の闇」)らの縁を結ぶうちに、自らにも思いがけない縁を受け入れることに……時に温かく、時に冷酷な江戸の人生模様を、名手・杉本章子が切り取った傑作時代小説!

内容説明

浮気相手との間に子まで生した夫との縁を切り、実家に戻っても居場所がなかったおこう。器量が逆に災いして奉公先を次々に変えるも、容色を武器にすることをきっぱり断るお島。嫁をいびり追い出したと噂されるお久米。妾奉公を自ら望んでやってきたお雪。あらぬ盗みの疑いをかけられた女中頭のお徳―。人と人との縁を結ぶ「三春屋」で女たちの運命は変わってゆく…著者3年ぶりの傑作最新刊!名手の紡ぐ江戸の人生模様。

著者等紹介

杉本章子[スギモトアキコ]
1953年、福岡県生まれ。1979年儒者寺門静軒を題材にした「男の軌跡」で歴史文学賞佳作を受賞しデビュー。1989年浮世絵師小林清親を主人公にした『東京新大橋雨中図』で直木賞受賞。2002年『おすず―信太郎人情始末帖』で中山義秀文学賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ふう

84
家というものが重い存在だった江戸時代。嫁という立場でも娘という立場でも幸せになれなかった女性が、口入屋という仕事に出会い、自分の力で幸せをつかむ物語です。と書けば、何だかよくある話のようですが、こんな考え方もあるんだと、見方捉え方対処の仕方の多様さに感心させられます。それはいつの時代でも、男でも女でも、周りの目ではなく自分の目で見て生きていきなさいという、作者の強いメッセージのようでもあります。一歩前に出ると遠くが見える、一歩下がると視野が広くなる。そして、転んだらまた起き上がる。しっとりと胸に残ります。2018/08/25

64
石女と言われ、婚家を出たおこう。里に帰るも兄夫婦に持参金を取られ、かつて乳母であったおとわが営む口入れ屋を頼って家を出る。おけいやお房の振る舞いにムカッ腹立てながら読んでいました。でもラストがおこうさんの幸せな未来が見えるような一言で終わっているのがよかった。2016/06/18

barabara

63
あらすじからして楽しみにしていた一冊。去り状…っていうのか、男に原因がある離縁一つでも江戸時代は大変だ。女にとってあまりに理不尽な流れも、著者の淀みない筆力に頁をめくらざるを得ないのはさすが。今で言う派遣代行業三春屋を曰く付きの縁から継ぎ、女1人で江戸の世を渡っていく力強さに心地よさを覚える。今のキャリアアップに頑張る女性より嗜みがあるんだなぁ。最後に女の幸せを掴み最高のジエンド。2015/02/04

shizuka

54
主人公おこう、いじっぱりで可愛げのない部分もあるけれど、でも甘えてばっかりで自立しない女性よりずっとかっこいい。旦那の浮気、浮気相手の妊娠からの婚家で味わう謂れもない責め苦。もう色々面倒だからとっとと離縁し乳母を頼って口入れ屋家業に就く。口入れ屋を訪れる様々な人々。おこうは時に優しく、時に厳しく接して行く。そんなとき訪れた恋。かりそめの仲といいながらも好いた人の子を妊娠。そこからの展開、勝利への凱旋に等しい。元夫の浮気女へ下された天罰も痛快!そして最後の一行。ああ、全て報われた。超絶ハッピーエンドな1冊。2017/03/26

baba

49
読メで知った初作家さん。よくある設定ですが、時代物は良いなと改めて思わされる作品。「生きている人が一番怖い」とおこうが言う通り、恨み辛みはあるものの、人との縁が広がっていくのが良い。なにより、こういう会話をしていたのだろうなと思わせる江戸言葉が粋で物語を盛り立てている。弱虫だけど強情張りのおこうが辛い経験から様々な人と巡り合い、幸せをつかんでいくのが読んでいて嬉しい。2015/03/14

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