出版社内容情報
元吉原の北、長谷川町に住まいする役者あがりの音四郎と妹お久。足に大けがを負い舞台から去った異父兄にはお久の知らぬ事情が……。
元吉原の北隣、長谷川町。その南側にあるお稲荷さんに通じた細道に移り住んで稽古屋の看板を掲げた音四郎とその妹お久。兄はほんの二年前まで芝居小屋に出ていた役者あがり、足に大けがを負って舞台を去り、今では隠居のように妹と暮らしている。厳しい稽古に妹は評判を案じるのだが――。
「大女」「ならのかんぬし」「いぬぼうさき」「はで彦」「宵は待ち」「鷺娘」「菊の露」「丙午」「にせ絵」。弦音ひびく江戸情緒あふれる9編を収録。
内容説明
元吉原の北、長谷川町三光新道に稽古屋の看板を掲げた音四郎と妹お久。眉目秀麗な兄は四年前まで期待の女形だった。舞台を去る原因となった脚の怪我をめぐる醜聞の真相とは―絃音ひびく江戸情緒あふれる九編を収録。
著者等紹介
奥山景布子[オクヤマキョウコ]
1966年愛知県生まれ。名古屋大学大学院文学研究科博士課程修了。文学博士。教職を経て、2007年、「平家蟹異聞」で第八七回オール讀物新人賞を受賞、2009年、受賞作を含む『源平六花撰』で単行本デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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藤枝梅安
85
将来を嘱望されていた若い女形、片足が不自由になり、役者を廃業して音四郎と名を替え、江戸の外れで稽古屋を始めた。腹違いの妹・お久が三味を弾き、音四郎が長唄を教える。家事を任されているのは、お光という身長の高い女性。この3人を中心として、思い通りにならない世の中を生きている人々を描く。出てくる人物たちは、誰もが人に言えない過去や苦悩を持ち、思い通りにならないのは世の中なのか自分自身なのか解らなくなっている町人や浪人たち。歌舞伎のセリフや歌詞を織り交ぜた洒落た作りになっている。引き締まった文章も品がある。2015/03/21
九月猫
34
怪我で役者の道を断たれた音四郎が唄・妹お久が三味線、の長唄の稽古屋を舞台にした連作集。音四郎の出生や怪我の理由を軸に展開されるのかと思いきや、どちらもさらり。人情話あり、芸事の精進話あり、おもしろかった。登場人物は多いけれど煩雑にならず、お久やお手伝いのお光の淡くほろ苦い恋模様や女心、音四郎の飲み込んだいろいろや妹を思う気持ちなども重くなり過ぎず良い塩梅。もう少し踏み込んでほしいところ、先が知りたいこと(特にお光ちゃんのこの先!)があるので、シリーズ化すると嬉しい。ああ、お三味線久しぶりに弾きたいなぁ♪2015/03/19
りこ
22
女形に向かない身長を努力でカバーし、やっと人気の頂点を極めようとした役者が不幸な事故?により廃業、唄方の師匠として妹と稽古屋を開き第二の人生を歩み出すが…と言う話し。シリーズ化して欲しいような味わいのある作品でした。2015/03/08
007
22
★★★★☆ 怪我で役者を諦めた兄と一緒に長唄の稽古屋を営む妹、それとお手伝いの大女おみつが中心の連作短編。スッキリした文章と落ち着いた内容が好みだった。歌舞伎を扱った小説では松井今朝子さんや田牧大和さんの作品を読みましたが、また一味違ってとても気に入りました。2014/12/25
ケイプ
18
足の怪我で役者としての道を諦めて長唄の稽古屋を始めた音四郎、共に三味線を教える妹のお久。それからお手伝いとして二人のもとで働くお光。音四郎の怪我の原因は何なのか、気になりながら読み進めました。お光の存在がとてもいいなぁ。それぞれが抱えた何かが少しずつ落ち着いていく。出来るならもう少しこの先の話を読んでみたいです。2015/01/15