差別と教育と私

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  • サイズ B6判/ページ数 261p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784163900421
  • NDC分類 371.56
  • Cコード C0095

出版社内容情報

行き場を失った私を救ったのはあの「同和教育」だった。その誕生から興隆そして衰退の歴史をたどり、自らの苦しみの超克を綴る。

日本の被差別部落を訪ねる旅に事件をおこした兄との思い出をかさね大宅壮一ノンフィクションを受賞した「日本の路地を旅する」。

その上原さんの二冊目の代表作ともいえる作品が誕生しました。

被差別部落で卸の肉屋をいとなむ父は母に暴力をふるい、それぞれが外に愛人をつくり、上原さんの家庭は地獄でした。父親に包丁で刺された母親を病院につれていくところを進学塾に通う級友にみつけられ、はやされ、幼い上原さんは、行き場を失って荒れていきます。家庭が闘争状態にあった上原さんは、小学生だったにも関わらず酒を飲んで登校、学校で暴力をふるうようになっていたのです。

そんな上原さんを救ったのが、「解放教育」を実践する一人の女性教師でした。自らの家庭と被差別の出自をクラスで涙ながらに語ったのが、中学三年のときでした。

その上原さんが、自らを救った「解放教育」とはなんだったのか、なぜそれが潮が引くように後退していったのか、を日本の同和教育、解放教育のエポックとなった、兵庫・八鹿高校事件、広島・世羅高校事件などの現場を歩きながらさぐっていきます。

それは、また自らが苦しみながら、それを超克していった上原さん自身の物語でもあります。

内容説明

差別は「同情融和」されるものではなく、闘い解放されるべきものなのだ、という主張のもと、戦後、「解放教育」が押し進められていく。「解放教育」を実際にうけ、崩壊する家庭の苦悩から救われた著者が、その意義とそこからの超克を、歴史の現場を歩くことで再発見。大宅壮一ノンフィクション賞受賞『日本の路地を旅する』の著者が描く、誰も書かなかった同和教育、解放教育。

目次

序章 初めての記憶
第1章 部落民であることを宣言した日
第2章 河内とマカレンコ
第3章 兵庫・八鹿高校事件顛末
第4章 広島・世羅高校事件の転機
第5章 同和教育の現在を歩く
終章 解放教育を超えて

著者等紹介

上原善広[ウエハラヨシヒロ]
1973年大阪府出身。大阪体育大学卒業後ノンフィクションの取材・執筆を始める。日本各地の被差別部落を訪ねた『日本の路地を旅する』で2010年、第41回大宅壮一ノンフィクション賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

おさむ

17
同和教育の歴史がよく分かりました。兵庫の八鹿事件や広島の世羅高校長自殺等の顛末というか内実が詳しく書かれています。関西では左翼主義と密接な繋がりを持ちながら、発展を遂げてきたんですね。今なお残る差別等、一筋縄ではいかない問題なんだなと実感。2014/12/15

gtn

16
右翼と左翼、犬猿の仲の二人の教師が中学校を立て直す「河内とマカレンコ」の章が痛快。特に、右翼の北山教頭は、路地の者に同情しない。寄り添わない。(しかし「寄り添う」とは嫌な言葉だ。)ただただ相手の懐に飛び込む。アポなしで家庭訪問し、飾らぬ住処を見る、生の声を引き出す。その結果、命が共鳴しあう。相手も、北山は悪い人間じゃないと思えてくる。中学再建も一気呵成に進んだわけではない。このような一人一人との結びつきがあってこそだと分かる。2018/12/03

sachiko.t

10
作者と同じ歳。自分の物の知らなさに恥ずかしくなった。2015/04/15

mustache

4
八鹿高校事件や世羅高校事件の顛末は、この筆者にしか書けない独特のドキュメンタリーになっていて、それ自体に学ぶところが多かった。しかしこの書はそれだけではない。自らの生い立ちと経験を踏み込んで語りながら、上原は各地の関係者に突っ込んだ話を聞きつつ、同和教育・解放教育の歴史と役割を彼なりに評価しようとする。とりわけ、同対法が期限切れになり、部落の混住が進み、差別が見えにくくなって部落解放教育そのものが根本的な退潮を迎えている現代の状況を、痛みとともに振り返るところに、いつもの「上原節」が冴えている。良書だ。2016/07/06

hiratax

4
教師の破天荒さが根本敬の漫画に出てくるような世界でおかしみがある。 路地の親が子どもに望む仕事が「イスに座る仕事」この最低限の要求からも世界がうかがい知れる。路地の高校生の合宿行事もあるよう。 著者の青春期としても読める。2014/08/30

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