出版社内容情報
八人の子供がいる家庭へ脅迫電話。「子供の命は預かった」。だが家には子供全員が揃っていた。誘拐されたのは誰? 表題作など八篇。
恋愛小説の名手にしてミステリーの鬼才から最後の贈り物
八人の子供がいる家庭へ脅迫電話。「子供の命は預かった」。だが家には子供全員が揃っていた。誘拐されたのは誰? 表題作など八篇。
内容説明
8人の子供と母親からなる家族へかかってきた1本の脅迫電話。「子供の命は預かった、3千万円を用意しろ」だが、家には子供全員が揃っていた!?生涯最後の短篇小説にして、なお誘拐ミステリーの新境地を開く表題作など全8篇。
著者等紹介
連城三紀彦[レンジョウミキヒコ]
1948年、愛知県名古屋市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。1977年、「変調二人羽織」で幻影城新人賞を受賞しデビューを果す。1981年に「戻り川心中」で日本推理作家協会賞を、1984年に『宵待草夜情』で吉川英治文学新人賞を、同年、『恋文』で第九十一回直木賞を受賞。1996年には『隠れ菊』で柴田錬三郎賞を受賞した。2012年10月に逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
332
2015年このミス国内第4位。 連城三紀彦が綴る短編集。 ミステリーと日本人的な 恋愛が楽しめるのがなぜか嬉しい。 男女の不思議な機微を うまく表現してくれる。 理性では説明できない人間 の業を事件を通して、 しっとりと描く。 目の前で起こっていること は真実なのか?妄想なのか? 著者の描く心象風景は なぜか儚く哀しいが、 心に染みるのはなぜなのだろう。表題作は最後に ニッコリするなごやかな お話だった。 2015/02/07
KAZOO
158
連城さんの最後の短編集といううたいですが、まだ未発表の作品があるはずです。それでもやはり連城ファンとしては見逃すわけにはいきません。表題作が一番印象に残っていますが他の作品も連城ワールドということでしょうか?男女の愛憎関係もかなりあり、楽しめましたがもうあまり新作を読めないということで、この作品が一種の呼び水となって再度読み直す本を手元に置きたくなりました。2016/02/24
紅はこべ
119
表題作はこの中で異色。仁木悦子っぽい。珍しくいいエンディングだし。他作品群の通奏低音は悪夢と疑惑。幸福な人間関係がまずない。『アンナ・カレーニナ』の冒頭の〈不幸な家庭はそれぞれ〉と言う文言を思い出す。不安と疑いが小説の素になるんだな。2019/09/08
じゅん兄
100
この作者らしい恋愛小説とミステリーの融合、男女の心の機敏や情念と言ったものを上手く叙述トリックに活かしている。この手のミステリーは正直苦手だけど「白雨」は面白かった。表題作だけ男女のドロドロとは無縁なのかと思っていたらラストはやっぱり恋愛の果てのトリック、でも中三に設定する必要性があったのだろうか。恋愛小説の妙手が策に溺れたような気がする。2015/03/08
けい
89
8編からなる短編集。各編において、ものの数ページで、物語の情景を読む側の頭に植え付ける記述は相変わらず見事です。物語のスケールとしてはやや小さめ(このあたりが2015年版このミス4位ってところでしょうか?)日常に近い所で起こる事件(とも言えない様なものも)を描きこんでいきます。とは言え虚実入り混じった文章に終始翻弄されっぱなしでした。表題作のネタには、まだこんな抽斗がありましたかと感心しきり。遠い所の旅も楽しいけれども、近場の高級な旅館で贅を尽くして満足、って感じの一冊です。2015/01/31