出版社内容情報
国家とは…上質のユーモアとエロティシズムを織り込み社会現象のように語られた「裏声で歌へ君が代」と、短篇の最高傑作「樹影譚」。
「台湾民主共和国」をめぐる問題作と短篇の最高傑作、2篇を収録した第四巻。
国家とは…上質のユーモアとエロティシズムを織り込み社会現象のように語られた「裏声で歌へ君が代」。壁に映る樹の影というイメージへの偏愛から、はるか幼少時の記憶までさかのぼっていく卓越した短篇「樹影譚」(川端康成文学賞受賞)。
解説・辻原登
内容説明
“台湾民主共和国”をめぐり、「国家とは?個人とは何か?」を問う最大の問題作に加え、川端賞受賞の短篇最高傑作「樹影譚」を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
salvia
2
『裏声…』は、亡命政権・台湾民主共和国の独立運動と、50代画商と若い未亡人の恋愛を描いた政治小説。主人公は、不合理な陸軍に愛想を尽かして幼年学校を中退したという特異な経歴の持ち主で、無鉄砲・囚われていない人。会話や心理描写が面白く、展開される国家論や台湾情勢にも興味をそそられた。重い内容なのに、軽妙洒脱な文章に釣られて一気に読み終えていた。『樹影譚』は入れ子構造になっているが、最後に主語となる人物が溶け合う。M.ロベールの小説起源論が効いている。通奏低音。これぞ小説を読む醍醐味だと思う作品だった。2025/05/06