出版社内容情報
貧乏中国人学生が臨時バイトで得た“高額報酬”の正しい使い途とは!? お金を巡る人間の喜怒哀楽と果てない欲望を描いた傑作長篇。
お金に狂わされずに生きるって、本当に難しい――
貧乏中国人学生が臨時バイトで得た“高額報酬”の正しい使い途とは!? お金を巡る人間の喜怒哀楽と果てない欲望を描いた傑作長篇。
内容説明
居酒屋で時給900円のバイトをしながら、法律の勉強にはげむ中国人女子留学生・林杏は、ある日同級生に、弁護士である父親が中国人容疑者の弁護をすることになったので通訳をしてほしい、と頼まれる。合計3時間50分の「労働」で得た報酬は、1万5千円!「わぁ、う、おぇ」驚きの声を発しながら、林杏はお札のなかで口を一の字に結ぶ着物姿の女性をしげしげと見つめた―。
著者等紹介
楊逸[ヤンイー]
1964年、中国黒龍江省ハルビン生まれ。1987年、留学生として来日し、お茶の水女子大学文教育学部地理学専攻を卒業。在日中国人向けの新聞社勤務などを経て、関東学院大学客員教授。2007年、「ワンちゃん」で第105回文學界新人賞を受賞。2008年、「時が滲む朝」で第一三九回芥川賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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nyanco
50
久しぶりの楊 逸さん、設定が面白そうだと思って読み始めました。お札の肖像にされている樋口一葉、福沢諭吉の立場で描かれた冒頭、なかなか面白い試みだな…と思ったのですが、読み進むとこの部分が非常に読みづらい。各国の紙幣の肖像達が会話をする…というアイディアは面白いと思ったんだけどね。中国人女子留学生・林杏の視点で描かれた日本の様子は、いつものことだが楊 逸らしさに溢れている。日本人や、日本のお金のこと、中国人から見たら…という話は中国人の楊さんにしか描けない。続→2013/07/09
そうたそ
45
★★☆☆☆ 普段は居酒屋でバイトしつつ弁護士を目指し頑張っている中国人女子留学生の林杏。ひょんなことから中国人容疑者の通訳を頼まれ得た報酬一万五千円。思わぬ報酬に林杏はお札に描かれた着物の女性の姿をしげしげと見つめるが――。林杏を描く章と、お札に描かれた女性(=樋口一葉)の視点で展開される物語が交互に進められるという構成。樋口一葉(作中で「おせん」と命名される)の視点から金への欲望つきぬ人間を描くということだったのだろうが、いまいち狙いが読めてこないし、面白さも分からない。技巧に走り過ぎた気がする。2016/01/28
ちゃんみー
41
さすが、楊逸さん。いつも中国人の視点で描かれる作品はどれも面白い。いつもは居酒屋でバイトをしている留学生の主人公が、通訳の仕事で得た紙幣。五千円札を、おせん、と名前で呼ぶところからお話が始まりました。各国の紙幣がお喋りをするところは、ふむふむ、なるほど、なんて思えました。お金の大切さを感じ、それに惑わされることなく行きていかなくっちゃ(^。^)流転の魔女とはおせんさんのことだったのですね。2013/07/31
Willie the Wildcat
28
お金。人生の全てではないが、人生の大切な”ツール”。心惑わすことなく、活かすには経験も必要。主人公の心情描写が身近・・・。特に、お札を崩す瞬間の気持ち!崩すとあっ!という間なんだよなぁ。父親に「1円を馬鹿にする人間は1円に泣く!」と言われたことが、脳裏に浮かぶ・・・。右往左往されることなく、”操り”たいものだ・・・。2014/01/24
らむり
28
中国人留学生目線と、樋口一葉目線の、お金にまつわるお話。2013/06/29