出版社内容情報
孫権の老衰で、大混乱に陥った呉。それを収めた諸葛恪もその後権力の陥穽に落ちて粛清される…。待望のシリーズ第十一巻。
宮城谷『三国志』第十一巻は、孫権の老衰によって呉が混乱するところから始まります。孫権は幾人もの忠臣の諫言を退けるばかりでなく処刑まで課し、さらに息子二人を跡継ぎとして争わせたため自ら国力を分断、呉を衰亡の途に導いてしまいます。孫権の死の寸前まで続いた苛烈な権力闘争に勝利した諸葛恪(諸葛亮の甥)も、そののち自ら墓穴を掘り、粛清の目に――。魏では司馬懿が権力を恣にする曹爽の目を欺くために詐病、政治から距離を取っていました。そして機が熟した時に司馬懿がとった行動は――。
劉備、孔明、曹操なき後も続く政治と権力をめぐる戦い――。『三国志』のドラマは続きます。
内容説明
老いた呉の孫権は名臣と良臣をつぎつぎに抹殺し、自ら国力を弱めてしまう。魏では曹爽の独裁に対して司馬懿がひそかに反抗の機会を窺っていた…。権力をめぐる暗闘は続く。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
キジネコ
55
カリスマが消えた大陸、権力は恰も魍魎の様に憑りつく相手を乗り換えていく。時代を切り拓き、鼎立の緊張を支えた知恵と勇気と侠が混沌の闇に呑み込まれていく。孔明と仲達、諸葛と司馬の系譜が生み出した二人の楔が時代の運営に果たした役割を、後続の世代はどの様に受け継いでいくのか…11巻の大きな潮流として、それが描かれます。しかし悲しいほどに人がいない。三国志の伝説に燦然と輝いた英雄たちに比べるべくもない器量が帝国の首座の側近に座り、握った権力の重さに潰されていきます。繰り返されるクーデター、魑魅の嗤いが闇に響きます。2019/05/18
KAZOO
54
この巻では呉を中心に話が進んでいます。孫権が死んでその後の後継者たち、あるいは蜀の状況などが語られます。確かにほかの三国志とは異なり、長いスパンでの各三国の状況をきちんと説明してくれます。ここまで書かれた三国志はないと思いますが、これが底本となる可能性はありますね。2015/05/30
future4227
47
魏の司馬懿の凄みが増している。軍事だけでなく、内政、権力闘争、どんな場面においても深謀遠慮を怠らない。反逆者への処罰も容赦ない厳しさで臨む。そんな中で郭淮に見せた優しさがなんとも心憎い。有能な人材を見いだす力も抜群。曹操と同様に好悪で人を判断せず、有能であればどんどん登用する。人事配置も適材適所で、派手な功績だけでなく、目立たない地味な仕事でもきちんと評価してくれる理想の上司。それに引き換え、呉の孫権は老害というべきか、やることなすこと支離滅裂。取り巻きの連中も佞臣ばかりが残り、滅亡近し。 2020/05/04
優希
42
遂に英傑も司馬仲間なのでしょうか。彼らは圧巻としか言えません。三国は不安定ながらも均衡を保っているようでした。劉備や孔明が逝ってしまっても三国志は続くということでしょう。次巻は最終巻。どんな物語が展開していくのか味わいたいと思います。2024/04/04
キジネコ
25
老廃を曝し迷妄の闇の中から手を伸ばし、覇業を支えた帝国の英傑たちを殺してゆく孫権、人が消え、やがて国家そのものを危うくする呉。英雄曹操と夏侯氏の築いた魏の実権は、凡庸な皇帝の膝の上から、司馬家の手に落ちる・・権力という魔物を持て余してしまう面々の、破綻と育たぬ器量、その限界の侘しさが満載の11巻、守ることは得るより難しい?救いは、清々しく輝く女傑二人!夏侯文寧のむすめ令女と許弁の妻 玩氏の言葉に思わず唸った、ナイス! 「このふたりが男だったら・・・」戯言ご容赦下さいませ。興味は、それでも12巻へと続く。2013/05/21