出版社内容情報
「剣道は殺し合いか」猜疑に苦しむ男の前に現れた天衣無縫の少年。2人が運命の一戦を交えるまでの一季節を煌く言葉で描きだす。
内容説明
羽田融はラップに夢中な高校二年生。ひょんなことから剣道をはじめるが、剣道部のコーチにして「以前、父親を殺したらしい」矢田部研吾からいきなり一本取る。ところが「マグレだよ」と先輩に言われ…。ラップ命の少年と人生にも剣にも倦んだ男の灼熱の季節と運命の打ち合いまでを揺るぎない文章で構築した超純文学。
著者等紹介
藤沢周[フジサワシュウ]
1959年、新潟県生まれ。法政大学文学部卒業。98年、「ブエノスアイレス午前零時」で第119回芥川賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しーふぉ
21
最初はヒップホップ少年が剣道に目覚める青春物だと思って読み始めた。しかしどす黒い展開に…剣道部のコーチはアル中、自分の父親と防具を着けずに木刀で立ち合い、植物状態にさせてしまっている。殺人剣と活人剣の違いや。剣道の哲学的な考えと禅などの要素も加わって読み応えのある本となっている。2017/10/21
ナチュラ
13
高校の剣道部の物語だが、スポーツものではない。 剣道というより「剣術」そして「禅」にも通づる内容だ。 主人公は2人、剣道に全く縁のないラッパー少年【融(とおる)】と、剣豪だがアル中の剣道部コーチ【矢田部】、この交わることの無い二人が出会うことで彼らの人生が大きく変化していく。 2人の間に入る剣の達人であり和尚の【光邑雪峯禅師】の人間性が素晴らしくカッコイイ。 読み応え十分だった。 2015/10/03
たいぱぱ
12
初・藤沢さん。誉田さんの武士道シリーズとは違う、ハードボイルドタッチの男の剣道もの。ハードボイルドだけど、ラッパーになりたい高校生が、才能を見込まれ剣道に引き込まれるという漫画チックな展開に少し違和感あり。宮本武蔵の葛藤に近い場面もあり面白いのだけど、何かもうひとつ足らない気がする。それでも続編があれば読んでみたいな。2016/05/31
...
11
相変わらず文章のコストが高くて素晴らしい。少年漫画的展開に逆行するようなストーリーがいい。2013/02/20
sibafu
10
真剣小説。よかった。久々に読む終わるのがもったいないと思いながらページをめくった。ラップ命の高校生羽田融(とおる)が剣道にのめり込んでいく。融と30代の矢田部研吾の主観が節毎に交互に入れ替わる。融パートはおちゃらけた部分もあるが、それによって剣道の試合の場面や研吾パートの暗く切迫した真剣さが引き立つ。あと本番の息抜きという役割も果たしていそう。真剣での勝負こそないものの木刀での殺し合いはある。その真剣さの描写が巧くて格好良い。まったくやったことのない、だからこそか剣道に憧れる。2012/12/28