内容説明
いまだ人を斬ったことがない貧乏御家人が刀を抜くとき、なにかが起こる。第18回松本清張賞受賞作。
著者等紹介
青山文平[アオヤマブンペイ]
1948年神奈川県横浜市生まれ。早稲田大学第一政治経済学部経済学科卒業。経済関係の出版社に18年間勤務した後、経済関係のライターとなる。『白樫の樹の下で』で第18回松本清張賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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文庫フリーク@灯れ松明の火
78
ああ、もったいない。大鱠(なます)と異名を付けられる残虐な辻斬り。なにゆえ異常な殺人剣の使い手となってしまったのか。○○の細かな心の描写がもっと欲しかった。佳絵のセリフ「ずっとずっと前からです。八つのときから」も、もう少し佳絵と登を描いて欲しい所。涙も洟も垂れるに任せ、錯乱したように糸みみずを採る登の姿が、更に哀切さを増したはず。そしてエピローグ。幼なじみの友も愛する女も斬られ、忠孝の士を斬り、敬する友も斬り、なお腰に剣を帯びて生きている自らの存在。その心の内には何があるのだろう。→続く2012/06/13
そうたそ
46
★★☆☆☆ この人の時代小説が面白いと聞き手にとってみた。直木賞の候補作にも挙がったということで、今後要注目の作家かと。本作は松本清張賞受賞のデビュー作。とてもデビュー作とは思えない文章力に冒頭から唸らされる。戦国時代とは打って変わって、すっかり人を斬るということがなくなってしまった江戸時代において剣の道に進む男たちの姿が描かれる。とはいえ、所詮は竹刀稽古。本物の刀を手にした時の彼らの心情たるや。とにかく新人とは思えない力量が感じられたが、ストーリーについてはまだまだ改善されるべき余地は感じられたかな。2014/12/22
とも
46
★★★★歴史ミステリー。江戸中興期の平和な時代に発生する殺人事件と時代の故に真剣を扱ったことのない木刀師範 村上登がどんどんと深入りしていく。すんなりと内容に入っていけ どんどんと読むスピードが上がりのめり込んで行く。最後は度重なるどんでん返しで、ミステリーとしても秀作である。2014/08/04
クリママ
42
無役の小普請組の倅で道場師範代の3人と熱心に剣道に向かう商家の次男坊。剣道の話を交えながらのこの物語はいったいどこへ行くのか。少し読み進めると、辻斬りが現れ、彼等の均衡も崩れ始める。それぞれが為すべきことを懸命に生きてきたのに、終盤は悲しく読むのが辛かった。そうなるであろう結末ながら、何故彼がそれほどまでに狂ったのか、譲り受けた刀はどうなったのか、せめてそのあたりも書ききってほしかった。2024/05/26
みっちゃん
36
この本に出会えて良かったです。将来に希望の持てない境遇の中で、心に闇を抱えながらも懸命に生きている若者たち。その危うい均衡、歯車が狂っていく様が淡々とですが、心に迫る筆致で描かれていきます。後半の辻斬りの犯人と動機が明らかになっていくところからラストにかけては、読むのが辛くさえありました。武士の在り方って何でしょう、すごく心が揺れました。この本、もっと話題になってもらいたいです。本屋大賞にでもノミネートされませんかね…2012/03/03