内容説明
医療現場で出会った忘れられない言葉の数々、山行で感じた現在という時間の比類なさ。生きることは、さりげない細部の集積だ。小さな輝きを愛でるようにつづったエッセイ集。
目次
1 冬から春(生きてるかい?;紙の一里塚 ほか)
2 春から夏(国立の桜;花見百姓 ほか)
3 夏から秋(森の滑車;夏休み留学 ほか)
4 秋から冬(秋の木曜日;秋の風に乗せて ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
katoyann
16
タイトルは著者の同僚である医師が90代の患者を触診していたときに、その患者が発したとされる言葉。医師と作家を兼業している著者が医師としての仕事や日常生活のエピソードを描写している。芥川賞受賞後にうつ病に罹患してからは、希死念慮もあり、執筆もできず、ただ死なないように生きるのに精一杯だったという。回復してからは登山を趣味とし、佐久平の環境下で、「ただ生きる」という生活の味わいを噛み締めているようだ。派手なエピソードはないが、淡々と日々を過ごして良いというメッセージが伝わってきて、なんだか心が楽になった。2024/09/24
hirayama46
4
南木佳士、小説ではあまり感じないのですが、エッセイを読んでいると、穏やかな気難しさみたいなものを感じます。ゆるやかな頑迷さとも言えるかもしれません。それは決して悪いものではなく、歳のとり方というものについてちょっと考えてしまいます。2018/10/19
hatako
4
芥川賞作家って苦手なことのほうが多いけれど、この人の本は見つけたら読んでいます。寡作だけどいい文章を書く作家さん。佐久の総合病院の医者でもある著者のエッセイ。各編に流れる雰囲気が好きです。特に印象に残ったのはP.25の一文。「『わたし』は不特定多数から認証されるのではなく、目の前の、呼びかければ答える『あなた』がいるからかろうじてその存在を実感できるだけのはかないものなのだと明確に自覚できる歳になった」2012/03/27
S.Fukazawa
3
芥川賞作家にして医師である著者のエッセイ集。医業のこと、小説のこと、山登りのこと等、テーマは様々です。しかし共通しているのは、「年齢を重ねたからこそわかること」が前面に押し出されている点。派手さはありませんが、深く沁み入るような一冊です。2011/10/27
だも
3
文体全体から穏やかな乾いた風を感じるようなエッセイです。実は、著者の作品は、『ダイアモンド』しか読んだことがなく(しかも5~6年前)この本も小説と間違えて手に取のですが・・・著者が命に係わる病気と闘っていたからか、命に対していい意味で乾いているように感じました。 あいまいな、それでいて繊細な体と精神の関係をこころという言葉で安易に表現したくない、という著者の考えに、この本で一番はっとさせられました。2011/08/28
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