出版社内容情報
日本の国際聯盟脱退、帝人事件、永田鉄山斬殺、そして二・二六事件。暗雲立ちこめる世界で決断を迫られる天皇と同時代の人々の姿。
内容説明
五・一五事件、天皇機関説問題、永田鉄山斬殺などを経て、国内のさまざまな矛盾の蓄積が昭和十一年二月二十六日、ついに噴出。未曾有の大混乱の中、若き天皇裕仁は強い意志を持ち、事件を鎮圧へと導いていく。
著者等紹介
福田和也[フクダカズヤ]
1960年、東京生まれ。慶應義塾大学文学部仏文科卒業。同大学院文学研究科仏文学専攻修士課程修了。現在、慶應義塾大学教授。文芸評論家として文壇、論壇で活躍中。93年『日本の家郷』で三島由紀夫賞、96年『甘美な人生』で平林たい子文学賞、2002年には、『地ひらく石原莞爾と昭和の夢』で山本七平賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ぐうぐう
15
『昭和天皇』第四部は、五・一五事件で幕を開ける。福田和也の言う「昭和七年から十一年は、近代日本の曲がり角ともいうべき四年間」の、その曲がり角は血生臭いテロで始まるのだ。昭和天皇の意に反する出来事が次々と起こっていく。テロで始まった四年間は、二・二六事件というテロで完全に曲がりきり(それが失敗に終わってもなお)、もはや、とりかえしのつかない場所に日本を運んでしまう。にしても、五・一五事件の犬養毅といい、二・二六事件の鈴木貫太郎といい、理不尽な銃口を向けられての、しかし堂々とした態度には胸打たれるものがある。2016/06/17
ひこまる
5
世界恐慌への対策が(努力したものの)後手後手にまわり、その貧窮および八方ふさがりが偏狭なナショナリズムを伴った国内世論を高め、軍部の暴走が始まるという悪循環。それを憂えた「彼の人」の行為は「君側の奸どもの仕業」とされ2.26事件を引き起こされるなど表面上はともかく、その権威は大きく失墜することとなってしまう。この凄まじい時流のうねりの中では「彼の人」の強い意志と指導力はその鎮圧のみに発揮されたのが関の山だったのだろう。第3部と同じく、この悪循環は現代の流れに似ているようで憂鬱な読後感にさせてくれる。2012/10/05
じろ
3
★★★★ 2・26事件にとうとう到着してしまいました…軍部はなんでこんな横暴ができたんだ?と思ってたけど国民の民度の問題でもあったんだなぁ…国民がアホだとこうなるってことか。そのかわり払った代償は国民からほとんど出されたものだけども。教育って大事だけど怖い…2019/09/27
勝浩1958
2
イギリス政府最高財政顧問リース・ロスのイギリス側からの提案を外務次官重光葵や外務大臣広田弘毅が受け容れていたら2010/10/09
Char
1
★★★★ 以前ご紹介した本シリーズもようやく第4巻を読破。本巻で一気に陸軍の暴走が進み始め、話の展開としてぐぐっと盛り上がってきました。面白い! しかし、戦前の混乱期の詳細を読むと歴史は繰り返すというか、今の日本とダブるところが多いなぁって思います。首相がコロコロ変わることだけでなく、変わる理由の幼稚さやら、空気が支配する意思決定の仕組みやら読んでいてデジャブすら感じます。 結果論で「どうして負けるとわかっている戦争を始めたのか?」と問われることが多いのですが、我々世代も後世に「どうして破綻するとわかって2012/05/16