出版社内容情報
「地獄は続いている。しかし、今のほうが良く生きているとも思う」病に倒れてなお創造的に生きるとは──「巨人」の壮絶な闘病ドキュメント。
内容説明
今も地獄は続いている。しかし、今のほうが良く生きているとも思う。NHKスペシャルのディレクターが描く、「鈍重な巨人」多田富雄氏の壮絶な闘病と寛容で豊かな生き方。四月に世を去った多田氏の遺言となるドキュメント。
目次
1 鈍重な巨人
2 撮影開始
3 前立腺がん
4 リハビリ
5 多田さんの日常
6 夫婦のかたち
7 原爆忌
著者等紹介
上田真理子[ウエダマリコ]
1968年生まれ。1990年NHKにディレクターとして入社。福岡放送局、報道局などでニュースや報道番組にたずさわる。現在は衛星放送の番組を制作している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ネギっ子gen
49
【大変な人と結婚してしまった】itokakeさんに本書を教えられ――。多田富雄の名は、免疫学の泰斗としてより、国の「リハビリの日数制限」に(脳梗塞で倒れた)体を張って反対する人、あの石牟礼道子と対談した人として刻印されている。その夫を「主人」と呼ぶ内科医でもある式江さんは、<昔から手のかかるひとだったんです。なんでもかんでもやってもらうのがあたりまえだった。家ではワンマンで、昔、あなたは亭主関白ねと言ったら、「いや違うよ。君は腰元でぼくはお殿様だよ」と言い直された>と。うーん、こういうタイプ厭だなぁ……⇒2024/03/26
zoe
21
インタビューを通じて、著者が師弟関係を結んだことがよくわかる本。社会人になってから、人生の師と仰げるような方と一緒に仕事をできる機会などそう多くはなく、羨ましい。脳梗塞と癌を生きる学者が、ありのままに全てをさらけ出して著者に応える。リハビリは維持期の患者に重要、さらに単に機能回復の訓練ではなく、人間の尊厳を取り戻すことである。病により、今まで知らなかった能力を知る創造的な営みの機会を得る。暗闇から光を奪い取ってくる努力と表現。戦争は、石ころかこん棒ですればいい。最後は目頭が熱くなります。2020/03/01
itokake
11
母が脳梗塞で倒れたので、先人の体験から学びたい一心で読んだが収穫は少なかった。過剰に多田先生を持ち上げる姿勢が気になったり、男尊女卑な夫婦関係に吐きそうになった。亭主関白が男尊女卑の最上級だと思っていたら、さらにその上があって、それは「殿様と腰元」。妻の式江(のりえ)さんの記述が本書の一番の収穫で、2番目の収穫は自分の唾液ですら飲み込めず溺れてしまうほど苦しい嚥下障害のリアル。著者はNHKディレクターで、取材の苦悩をあれこれと綴っているが、そんなのどうでもよかった。2024/02/23
takao
2
ふむ2022/11/28
みゅいる
0
私の人生に多大に影響した人。多田先生。先生の本には色々なことを教えられ、考えさせられてきた。リハビリとはどんな仕事なのか、患者はリハビリに何を望むのか、リハビリの真髄とは何なのか…。私が悩んだとき、その答えは先生が教えてくれたような気がします。心の中の靄が晴れた気がして、感謝の気持ちでいっぱいです。今後も読み返す度、こんな気持ちになるのでしょう。2014/07/01