出版社内容情報
かつて中上健次が「路地」と呼んだ被差別部落。その出身者である著者が、日本全国に存在する路地を旅する異色のノンフィクション。
内容説明
自身の出身地である大阪・更池から中上健次の故郷・新宮へ。日本全国500以上の「路地」をめぐり歩いた十三年間の記録。
目次
第1章 ルーツ―大阪
第2章 最北の路地―青森、秋田
第3章 地霊―東京、滋賀
第4章 時代―山口、岐阜
第5章 温泉めぐり―大分、長野
第6章 島々の忘れられた路地―佐渡、対馬
第7章 孤独―鳥取、群馬
第8章 若者たち―長崎、熊本
終章 血縁―沖縄
著者等紹介
上原善広[ウエハラヨシヒロ]
昭和48(1973)年、大阪府出身。国内外のさまざまな人や出来事をテーマに取材執筆している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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- 評価
あむーる堂の本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さつき
58
被差別部落のことを「路地」と呼ぶことがあるとは知りませんでした。本書は大阪の「路地」出身の著者が日本全国にある「路地」をめぐる旅。私の住んでいる地域では、近隣に「路地」があるという話を聞いたこともなく現代にもまだ残っているのかと正直ショックを受けました。ただほとんどの地域では若い人は気にしていないくて、古い人が亡くなれば消えていくだろうとのことですが…城下町で街道を警護する役目を与えられていた等、地域によって違う「路地」の成立する歴史にも触れられていて興味深かったです。2017/11/19
touch.0324
55
中上健次は被差別部落を"路地"と呼んだ。本書はその路地の成り立ちや、全国の路地の歴史を記したルポタージュである。路地の歴史はもうひとつの日本史だ。江戸時代、エタと呼ばれた人々は、虐げられながらも皮革産業や芸能、肉食の文学を育んできた。幕末期、吉田松陰の「草莽崛起」の思想を継いだ高杉は「見渡せばエタも乞食もなかりけり」と詠んだ。吉田稔麿は高杉の奇兵隊に倣い路地の者から屠勇隊を組織した。松下村塾の思想は明治政府に受け継がれ、「解放令」を生み、中上作品の舞台となる近代(「同対法」の施行を前後)へと繋がる。2014/11/23
ポチ
53
路地=被差別部落。路地出身者の著者が日本各地の路地の成り立ちや現状を訪ね歩く。重い事柄を淡々と語っているのが印象的。2017/12/10
kinkin
32
被差別部落のことを「路地」と呼んだ中上健次。その路地を見つめ直すために、東北から沖縄まで、各地の「路地」を一人で旅を続ける著者。いまだにタブーとされている差別問題を、路地で出会った人々との会話を通して書かれている。「路地」出身者である著者のストレートな疑問と、暖かい視線を感じることが出来た。2014/02/13
kawa
31
自分の先祖がどのような人でどのような生涯を送ってきたかは大いに関心ありで、私自身も機会を得ながら縁の地を訪ねている。筆者は被差別部落出身で広く全国の縁の地を訪ねる。それは自分探しの旅でもあるのだろうと想像。そう言う意味でとてもシンパシーを感じられるが、世間で喧伝されている差別事案、他人事の酷い話しと自分が傍観者ズラしている事が一番の問題かも知れない。興味深くも夢中の読み時間を持てたのだが、どんより重い読後感でもある。2024/06/02