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内容説明
鎮魂、そして救済。「シベリア・シリーズ」で知られる戦後最大の画家・香月泰男。著者10年の構想を経て、ついに完成した香月研究の決定版。
目次
第1部 再録「私のシベリヤ」(一九七〇年、文芸春秋刊)
第2部 シベリア抑留の足跡を追って(「北へ西へ」「アムール」―収容所到着まで;「埋葬」「涅槃」―死の収容所体験;収容所群島の全貌)
第3部 別稿 絵具箱に残された十二文字
第4部 鎮魂と救済(福島繁太郎と香月泰男;三つの救済)
著者等紹介
立花隆[タチバナタカシ]
1940年長崎県生まれ。64年東京大学仏文科卒業。文芸春秋に勤務した後、66年に退社。東京大学に再入学し、在学中から評論活動に入る。74年の「田中角栄研究―その金脈と人脈」(「文芸春秋」11月号)は首相の犯罪をあばいて社会に大きな衝撃を与えた。社会的問題のほか科学技術など、その活動領域は広い
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やいっち
75
(前略)小生が敢えて「神農」を取り上げるのは、極寒の地・シベリアでの抑留体験で香月泰男に限らず、誰もが苦しんだのは苦役の辛さ、シベリアの寒さ(排泄物も排出した瞬間から凍り付いていくという笑うに笑えぬ悲惨さ)、望郷の念もさることながら、日々において食べるものに窮したということがある。2006/07/04
ykshzk(虎猫図案房)
20
葉山での「香月泰男展」を見てからこちらを。図録ではなくどうしてもしっかりした解説が読みたかった。好きな画家についての立花氏本がある幸運。シベリア抑留を経験した画家は、帰国後にその体験を「シベリア・シリーズ」として描き始める。画家としての想像力と観察眼は、抑留生活を生き延びる助けとなり、帰国後にシベリアを描くことは、シベリアとは何だったのかを捉える手がかりとなる。立花氏が「相当の交通費がかかったとしても実物を見ることをお勧めする」のは本当だと思う。個人的には、モナリザとかは見なくてもこれは本物見るべき。 2021/10/28
ステビア
19
この人も戦争体験を描き続けた人である。実際の絵は全然違うということが繰り返し述べられており、ぜひ見てみたくなった。2020/10/28
チャーリブ
16
香月泰男氏は、シベリア抑留体験を基にしたライフワーク「シベリア・シリーズ」が有名で『私のシベリヤ』という体験談をまとめた著作もある。私も2004年東京でその展覧会を観たが、黒を基調とする独特の画風が強く印象に残って氏の著書も読んだ。今回本書を読んで驚いたのが、立花隆氏が『私のシベリヤ』のゴーストライターだったことと、2004年の東京会場での展覧会がシリーズの一部作品のみの展示で「恥ずべきこと」と扱き下ろされていたことだ。幸い9月に神奈川県近代美術館で全作品を展示するというのでしっかり観てリベンジしたい。○2021/08/27
DEE
12
シベリア抑留とその前後の自らの体験を描き、後にシベリア・シリーズと呼ばれた香月泰男の57点の作品。著者がゴーストライターとして書いた「私のシベリヤ」。香月本人に長く話を聞き、実際にシベリアにも足を運んで、作品の奥深くまで入り込んでいく。自分には絵の背景の考察なんてできないが、なんて重い絵なんだという感想を持った。画家にとってシベリアは生涯忘れたくても忘れられず、離れたくても離れられない場所であったのだろう。タイトルの香月泰男の世界、まさにそのものだと思う。2021/10/28