出版社内容情報
小説づくりの名工の手になる、ゆるがざる小説世界。これこそ人生通の大人の物語。愛惜さそう忘れがたい情趣のすべてがここにある
内容説明
小説づくりの名工。端正緻密な小説世界。これこそ人生通の、大人の物語。日本人なら忘れがたい、愛惜さそう情趣のすべてがここにある。市井小説短篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
モトラッド
33
★★★★★ 藤沢文学の魅力が最も際立つ“市井もの”=『溟い海』から『冬の終わりに』まで、21篇収録。全集第二巻と合わせて、合計51短篇の“市井もの“すべてに出逢える。目次の前頁に、先生の顔写真があるのも、嬉しい限りである。2020/03/28
たつや
9
去年の12月末に図書館で借り、延長をし、ゆっくり、一遍ずつ、他の本と併読しつつ、市井の小説集を味わった。昔、親がテレビで観ていた博奕打ちも多く出てくる。エンタメ風ではあった。まだ一巻なので、続けて、全集をゆったり読み続けられれば、良いなと思う。2025/01/14
ジュール
8
初期の短編集。 分厚いので、たくさんあった。「闇の梯子」日常が少しずつ崩れて堕ちていく恐ろしさ。少しの油断で誰にでも訪れる。「父と呼べ」定番的な人情もの。「おふく」幼馴染で好きだったおふくを探す造酒蔵。やくざに落ちるが、そこで出会ったおふくに似た病身のおなみ。堕ちた2人は惹かれ会うが、同時に生きることを投げているおなみ。束の間の幸せも、造酒蔵は都落ちに。 おきみの死。 デカダンスを感じさせる。2018/08/31
kj54
6
拾い読みするつもりが全部読んでしまった。よく言われるように初期作品は暗い。どの主人公も、のっぴきならなさをかかえて身動きが取れなくなっているようにみえる。しかし、こうやって時系列で読んでみると、少しずつ少しずつ、その暗さがゆるんでいくのがおもしろいように感じられた。ハッピーエンドなど一つもないが、それでもこんがらかった結び目から、あるいは永遠のような凍土から、希望に似た何かが感じられるようになっていく。2014/06/27
オールド・ボリシェビク
5
藤沢周平全集第1巻は「市井もの」である。作家最初期の短編を集めている。葛飾北斎の暗い情念を描く「溟い海」など、以前に読んだときは「暗い作風だなあ」と思ったものだが、いま、読み返すと意外と明るいユーモアもそこはかと感じられる。歌川広重を描いた短編もあり、藤沢周平、浮世絵師にはかなり興味があったのだ。その他の短編はばくち打ちの話が多い。イカサマの手口なども詳しい。市井というよりも、流れ者、ばくち打ち小説だな。でも、読ませる。この作家、初期から完成していた。2024/08/03