出版社内容情報
ナチス崩解とともにアドルフ・ヒットラーは自殺し、かつて親友だった二人のアドルフにも、パレスチナの闘いとともに死が訪れる。人間再生への祈りをこめた大団円
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
keroppi
76
全4巻を再読了。「正義」の名のもとに繰り返される殺戮。恨みは恨みを呼ぶ。「正義ってものの正体をすこしばかり考えてくれりゃいいと思いましてね…」戦争の悲劇をこれでもかと見せつけてくれた本作。「火の鳥 大地編」を手塚治虫が描いていたら、もっと違うものになっていたのだろうと思う。久々に読み返した「アドルフに告ぐ」だが、読み応えたっぷりで、最近読み返していない蔵書の他作品も読み返したなってきた。2021/03/30
りんご
39
プロローグとエピローグは同じシーン。墓前に花を手向ける男性。三人のアドルフの物語で、最後のアドルフが死んだらしい。そして始まる物語は1936年のベルリンオリンピック。そうです、アドルフ・ヒトラーが1人目のアドルフです。語るのは記者、峠草平。ヒトラーの出自に関する爆弾級の噂の証拠ともなる文書を巡り、峠の人生は思いもよらないものになります。ドイツ人少年アドルフとユダヤ人少年アドルフも関わってきます。この2人の成長を描くことで、私たちも気持ちを寄り添わせやすくなり、一層平和を求める気持ちが強くなります。2022/08/24
AKO
20
中尉になってからのアドルフ・カウフマンの激変が……。物語の終わりで、カウフマンは「世界中の子どもが正義だといって殺しを教えられたら、いつか世界中の人間は全滅するだろうな」と語る。カウフマンのやっていたことは許されてはいけないのだろうけれど、彼も時代の被害者なのは間違いない……。戦争はいけない、殺しはいけないというだけなら簡単だけど、実際問題になるとそんな綺麗ごとは通用しないだろう。何もできず、一元的な正義を振りかざすくらいなら、耳と目を閉じ、口を噤んだ人間になった方がよっぽど良心的なのかもしれない↓2022/07/29
アキ
19
何も報われない、救われない物語でした。それが、歴史の元となった事実でもあると考えると、途方に暮れてしまいそうです…。それでも、「アドルフ」=偏狭な「正義」をかざす者(ある意味人間臭い)、彼らがいつの世にもいる限り、「アドルフに告ぐ」使命がこの作品にはある気がしてきます。2015/07/20
剛腕伝説
17
アドルフ・カウフマンのユダヤ人虐殺に、拍車がかかる。第2次世界大戦の戦況は日独伊に不利になっていく。ヒトラーの精神が一層、病んでくる。アドルフ・カウフマンが秘密文章を手に入れたときには、ヒトラーは部下に殺された後だった。その後、2人のアドルフは、イスラエルとアラブに別れて、殺戮者となっていく。あれだけドイツに迫害されたイスラエル人が、単なる被害者ではなく、戦後、建国の為とは言いながらアラブ人を虐殺する側として、描かれている。うーん、考えさせられる。2022/07/31