出版社内容情報
「母はどんな声だったろう」。残された断片から母の姿を蘇らせながら、昭和の時代と自らの存在を見詰め直そうとした感動的作品。未完
内容説明
死と直面して初めて鮮かに蘇った母の姿。残された断片から母の姿を追い、自らの存在を見詰め直した感動的作品(未完)。石原慎太郎、吉本隆明、福田和也各氏の追悼と年譜を併録。
目次
幼年時代
追悼(江藤淳氏を悼む(福田和也)
江藤淳記(吉本隆明)
さらば、友よ、江藤よ!(石原慎太郎))
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
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20
青山墓地にある江藤家の墓所。江藤淳は妻に先立たれた直後から、病に冒され死に瀕しながら辛うじて生還し葬儀万端終えた。それを母に報告したい、母の声が聞きたいと思い、手帖や手紙を開く。手紙の行間から母の声が耳の奥に聴こえて来たと言う。母の家族に対する気遣いや愛情を綴りながら、未完のまま自死した。追悼文から彼をさらに知りたくなった。『成熟と喪失』では喪失を宿命として受け止め、努力を倦まず続ける治者となる成熟の経路を示した。また、国家衰亡の最大の原因は自己決定能力の喪失に他ならないと飽かずに警告していた人だと言う。2020/06/01
よし
6
8年前に読んだ再読本。死ぬ1ヶ月前に書かれ、絶筆となってしまった。三才ころに亡くなった母の手紙から、当時を切々と思い出そうとしている。読んでいてたまらなくなってしまう。哀切の念止まず。石原慎太郎の「追悼 さらば、友よ、江藤よ!」に心がふるえるようであった。亡くなったのはもう、20年前になるか。まだ読んでない本が何冊もあった。読み続けよう。2020/03/17
marsh
1
評論家 江藤淳の作品は20代の頃「漱石とその時代」第一部を読んで以来のことで関心はあったものの保守政治の論客のイメージが強く、他作品に触れるチャンスがないままであった。この作品は最愛の夫人の病死を追う形で1999年自死した作家の遺作となったが、幼い頃に亡くなった母の姿を断片的エピソードなどから追い、自らの存在を見つめ直してみたいとの想いに溢れた作品となっていて未完なのが残念です。吉本隆明や石原慎太郎の追悼文も友人への想いが伝わり秀逸であった。(父蔵書から)2017/03/26
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