出版社内容情報
少年エルロイを狂わせた母の死。歪んだ前半生を越え、今、彼は事件の再捜査に挑む。母への愛と憎悪が荒れ狂う悲痛で凄絶な自伝
内容説明
『アメリカ文学界の魔犬』と呼ばれるこの作家を育んだのは、ありきたりの文学修行ではない。十歳のとき起きた陰惨な事件が、この稀有な才能の源となった。1958年6月22日―何者かに実母を殺害されたのだ。崩壊家庭で育ち、母を増悪し、母を欲した少年は、心に暗いトラウマを抱え込み、狂いはじめる。犯罪、薬物、妄想―そして現在、地獄の底から生還し、アメリカを代表する作家となった男は、欲望と頽廃の街LAへ帰る―母を殺した男を探すために。母の秘密を暴くために。母を愛するために。本書はその全記録、母への狂おしい愛を刻みこんだ鎮魂の書である。
目次
1 赤毛の女
2 写真の少年
3 ストーナー
4 ジニーヴァ・ヒリカー
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やいっち
33
若いころは犯罪常習者だった著者。二十歳代の半ばに薬漬けの日々から自覚し脱却。十歳の頃に母が強姦され殺された。犯人は見つからない。父は見栄えはいいが女にも何もかもがだらしない。でも、子供(著者)に対しては立派な父像を演じ、妻(著者の母)はろくでもない奴だとこき下ろす。両親はいがみ合うばかり。そんな家庭に生まれ育ったのである。彼は内なる暗黒を抱え、鋭い頭脳と無類の記憶力で書き手を目指す。書くことで罪の世界に溺れることはなかったわけである。ここに書くことの謎がある。2019/06/10
一乗寺隼人
5
エルロイ初期の作品を読んでいって、これは再読しておかなくてはと思い読んだ。彼の作品よりもフィクションみたいで事実は小説よりも奇なりを確認。2016/06/12
ツカモトカネユキ
3
1996年原版発行の1999年訳版。犯罪小説の大家である作者のすべての作品のもととなる作品。詳細なルポなので調べられるだけの関係するすべての人物が登場し、なかなか読むのには時間がかかります。四章立てで、きっかけの顛末、作者の小説家として身を立てるまでの自叙伝、本作の詳細を語る鍵となるパートナーである捜査官の物語、最終章で、母の人生を掘り起こした内容となってます。多くの人は親の知られざる過去を知らずして人生を終えますが、作者の作品及び人生すべての重要な鍵となるのであれば、納得の仕上がりとなっています。2025/05/22
hikarunoir
2
エルロイという作品のクライマックス。