出版社内容情報
柳田国男以降、最大といっていい業績をあげながら、領域の広さゆえに座標軸の定まらぬ巨人を知己の証言、自筆恋文等から描く評伝
内容説明
柳田国男以後、最大の功績をあげたといわれる民俗学者・宮本常一の人と業績を自筆恋文など発掘資料で追いつつ、壮図を物心両面で支えた器量人・渋沢敬三の“高貴なる精神”の系譜を訪ねる…。
目次
周防大島
護摩をのむ
渋沢家の方へ
廃嫡訴訟
恋文の束
偉大なるパトロン
父の童謡
大東亜の頃
悲劇の総裁
“ニコ没”の孤影
萩の花
八学会連合
対馬にて
土佐源氏の謎
角栄の弔辞
長い道
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
山口透析鉄
38
これは図書館本で読みました。 宮本常一氏の弟子筋の教師が私の高校の地理の教師にもいて(名前が作中にも出ていました)、その方の授業には当たりませんでしたが、気にはなっていたので、この大著を読みました。 民家を泊まり歩き、聞き書きをノートにまとめ、柳田國男氏とかとはまた異なる日本の民俗学を作った宮本常一氏と、そのパトロン的存在だった渋沢敬三氏の関係も良かったです。 結核だったので、何とかしてストレプトマイシンを入手して宮本常一氏に渡してとか、エピソードも満載な、すこぶる面白い本でした。1998/04/04
Akihiro Nishio
21
大好きな宮本常一と、彼を支えた渋沢敬三の評伝。作品をある程度読んでいて知っていたつもりだが、宮本がこれほど圧倒的な仕事をしたこと、渋沢が現在の価値で100億もの資金を民俗学徒のために援助したこと、2人と柳田を取り巻く人間模様、妻への恋文の中にだけ明かされる薄暗い過去の一片、そして何より植民地政策と民俗学の深い関わりなど、驚くべき内容の連続であった。自分の足で歩き、目で見て耳で聞くことをさぼってはいけないと深く自戒した。良い時期に良い本に出会えたことを感謝したい。2016/07/18
シルク
20
読む前は、「なんで、宮本常一『と』渋沢敬三、なんだ? そんなダブルヒロインみたいなことせんで、片方だけ取り上げて、じっくり描いて欲しいな~」みたいなことを思った。が、この本を読み進めていくと、宮本常一と渋沢敬三に関しては、、いや、殊に宮本常一に関しては、「渋沢敬三なくしては、宮本常一は有り得なかった」と言いうるものだったのだと、ハッキリ思うようになった。うん、学問をするのって、金がかかるんです。人によっては、「いやーまあ、理系の研究だと、そりゃあ器具とか装置とか何とか、色々金も掛かろうけれど、文系なら、→2022/03/18
三平
16
大宅賞受賞作。敬愛してやまない民俗学者宮本常一と、彼を含む多くの学究の徒を支えた財界人渋沢敬三の生涯を調べ尽くした力作。赤裸々な恋文まで暴露したり、ある人物に関しては悪意的な表現があったり少々エグイ筆致。でも深く斬り込んだからこそ浮かびある真実もあるのは確か。 特に実業界で生きながら力なき者への優しい眼差しを持ち続けた敬三の根底には経世済民を心掛けた渋沢家の家風とともに、廃嫡された父の代わりに家を継ぐ重圧、弱い心、孤独、そして本当にやりたいことへの諦めが深く影響していることを感じさせられた。2016/05/22
さえきかずひこ
13
民俗学を超え巨大な足跡を遺した宮本常一と、その金銭的・精神的支援を果たした渋沢敬三の二人を中心に描いた評伝作品。粘り強く綿密な取材にもとづいた記述は、彼らの一本筋を通した激しい人生の旅の裏面に、近代日本の劇的な変化と進み行きをも蔵している。両人への深い敬愛に溢れながらも、絶え間ない称賛のみに終わらず、彼らの抱えた女性問題についても筆を緩めていない。大事業を成した大人(たいじん)のダイナミックな生涯に触れてみたい方はぜひ!宮本の『忘れられた日本人』で印象深い「土佐源氏」の正体が明かされる14章は必読である。2019/10/21
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