出版社内容情報
世紀末ウィーンのハプスブルク王家の嫡流に生まれ、王家崩壊と二度の大戦を経て、社民党闘士と再婚した美しき大公女の波瀾の人生
内容説明
世紀末ウィーンで男爵令嬢と心中した皇太子ルドルフを父に、ハプスブルク帝国の黄昏を予感する老皇帝を祖父に、運命の子として生まれたエリザベート。その流転の一生を描いて、ヒトラー・ナチス、スターリンの嵐に翻弄される「中欧」の三姉妹都市ウィーン、プラハ、ブダペストの動乱と悲劇を浮かび上がらせた一大叙事詩。
目次
第1部 春愁―花ひらくウィーンの森
第2部 青夏―波しぶくアドリア海
第3部 晩秋―激流のドナウ河
第4部 厳冬―木枯し吹くブダペスト
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
173
第24回(1993年)大宅壮一ノンフィクション賞受賞。 王朝の落日と、歴史に翻弄された人生という意味では、日本では、溥儀が有名だが、このエリザベートの人生も 波乱万丈である。ヨーロッパ大陸における「ハプスブルク家」の位置づけは、 世界史に疎いため実感できないが、逆に疎いために、 新鮮に読める。オーストリアの視点からの欧州の世界大戦と意味でも世界史が好きな人にはたまらない本なのでは、 と思う。2014/07/27
星落秋風五丈原
42
映画『うたかたの恋』でオーストリア皇太子ルドルフとマリ―・ヴェッツェラの情死事件は身分違いの悲恋をロマンティックに謳っていた。映画が終われば観客達はその出来事を忘れるが家族は悲劇の後も生きなければならない。あまりにもマイヤーリンクが有名になり忘れ去られているのが皇太子と皇太子妃ステファニーとの間に生まれたエリザベートという名の娘だ。を描くが、元皇女としての立場上、どうしてもオーストリアという国にも触れずにはいられない。オーストリアは、第一次大戦の敗戦を乗り越えて間もなく、ヒトラー率いるドイツに蹂躙される。2017/08/24
yapipi
12
激動する時代、歴史や伝統に振り回されたハプスブルグ家最後の皇女の物語。180センチ近い長身、夢見るような瞳、見るもの全てを魅了して止まない皇女エリザベートは、あの著名なエリザベートの孫娘にあたる。父ルドルフのピストル自殺、母との離別、ハプスブルグ帝国の瓦解、愚かな結婚、ヒトラーとの確執、社会主義者との再婚・・私的公的に苦難に襲われた生涯だった。しかし、次々と襲う波乱はエリザベートを鍛えあげハプスブルグの血をこの世に受け継ぐことに成功し、自身も1960年代まで生き抜いた。プライドとは、品格とは何かを問う。2025/05/06
まあやん
9
有名なエリザベート(シシィ)の孫娘のエリザベートの物語。ハプスブルク家の時代、第一次世界大戦から第二次世界大戦、ヒトラーの時代、オーストラリアの独立までの激動の時代をエリザベートを中心にして描かれている。読み終わるのに時間はかかったが、知らないことだらけで、とても面白かった。ハプスブルク家なんて遠い昔のことと思ってたいたが、エリザベートはついこのあいだまで生きていた生身の女性で、歴史が身近に感じられた。2019/04/27
hasegawa noboru
7
エリザベート・マリー・ペツネック(1883~1963)オーストリア・ハンガリー帝国のフランツ・ヨーゼフ皇帝と美女で名高い皇后エリザベートの孫娘にして、世紀末17歳の令嬢と心中事件で死んだ皇太子ルドルフを父に持つ女性。”天馬空をかける”がごとく生きたというその生涯を視点に据えて、ウィーンの世紀末から第一次大戦、第二次大戦を経て東西冷戦時代に至る20世紀激動のヨーロッパ史を俯瞰し、というか俯瞰でき(以上のことを私は初めて知ったわけ)詳述する。伝記としての深みには欠けるが、一大スペクタル歴史物語である。2018/07/24