出版社内容情報
篤胤の前に再び現れた“天狗小僧寅吉”こと嘉津間。仙境を巡り歩き見聞した凄まじき奇譚の数々から、人間の抱える業が垣間見える。
内容説明
天狗の千里眼がえぐりだす現代人の業と病理!平田篤胤のもとに再び現れた“天狗小僧”こと嘉津間。時空を超えて旅をする嘉津間が見た魔境とは、現在の私たちの世界!?愛と僧しみ、希望と妄執が渦巻く魔境へ、やがて篤胤も旅立っていく。
著者等紹介
坂東眞砂子[バンドウマサコ]
昭和33(1958)年、高知県生まれ。奈良女子大学住居学科卒業後、イタリアに留学し、インテリアデザインを学ぶ。帰国後、フリーライターとして働きつつ童話を発表。57年、第七回毎日童話新人賞優秀賞を受賞。平成8(1996)年、『桜雨』で第三回島清恋愛文学賞を、9年には『山妣』で第百十六回直木賞を、14年には『曼荼羅道』で第十五回柴田錬三郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
うしこ@灯れ松明の火(文庫フリークさんに賛同)
61
平田篤胤の元を訪ねてきたのは“天狗小僧”こと嘉津間。彼はその不思議な力で魔境に行き来することができ・・。「太祖墓陵、猫女、童翁、鬼母神、火札、貌孕み、妖魔」人間の様々な業を描いた連作短編集全7話。決して後味の良い話ではありませんが、この怪しげな雰囲気に惹かれてページをめくらずにはいられませんでした。話としては人として誰もが持っている嫉妬や執着心などが描かれていて、一歩踏み違えると彼女たちのようになってしまうのかと思うとゾッとしました。「猫女」「童翁」「貌孕み」の話が印象に残りました。★★★★2012/09/09
なにょう
20
短編連作。江戸物かと思いきや現代を風刺する。毒があるのは坂東さんで、文藝春秋だから仕方ない(思いっきし偏見だ。)①兵馬俑の発見者のサイン入りハガキ買っちゃった。②童翁。一番恐いのは、寿命が来ても死なないこと……。p126役目を終えたら人生を終わりにするという死生観もあるね。④常春の島、美貌、じゃんじゃん買い物できる不思議なカード、つまりクレジットカード。これ以上何の不満がある。しかし心がけ間違えたら身の破滅一直線。⑦終章。まさかの宣長さんの墓もうで。隣り町を寂れた町と描写されるのは……。松阪は良い所。→2021/06/15
りこ
19
幼少の頃、天狗に拐われ魔境へ行ったと言う寅吉(壽津間)の話しに魅せられた平田篤胤に、壽津間が語る様々な魔境の話しが現代の世界と重なり、独特の世界が広がる。個人的にはもうちょっとラストは盛り上って欲しかったが淡々とした味もまた良い。2015/02/16
tama
17
図書館本 坂東シリーズで。 恐らく天狗小僧が先にあってそれから平田篤胤だったのではないかなぁ。短編の集積ですが、後で、のお楽しみはなくその場その場でおしまい。稲丸善太郎も「?」(調べても何もない)ですし、長男が最後に出てきたことの全体の中での関係もどうも見えません。と、まあ、これは私の読込不足もありますね。若干、残念。2014/09/13
ショコラテ
8
国学に傾倒する篤胤に、幼い頃に神隠しに会い、今は山人の下で修行する嘉津間が語る、魔境でのできごと。延々と耳元で厭な話を囁かれているようだった。連作短編で一作一作は短いのに、進まない進まない。動物好きとしては、二話目の猫の話が一番後味が悪かったかな。仏教のことを「仏という名の印度人になにができる」とけちょんけちょんなのには笑わせてもらったが…。2011/04/17