出版社内容情報
人間とはかくも愚かで醜いのか。どんな人間も一皮むけば“業”に囚われているのだ。私小説の名手が描く、妖しくも哀しい掌篇小説集。
内容説明
「この世で人の欲ほど怖いものはない」あさましき“業”に憑かれた人々を描く掌篇小説集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
メタボン
31
☆☆☆★ ざわざわとした読後感が残る短編集。境遇が似たような人物が多いのは、どうしても作者が生きてきた背景を私小説のようになぞるがゆえなのか。ねずみ色の重苦しく湿った部屋の中に終始いるような感覚。嫌いではない。車谷文学のエッセンスのようであり、本格的な長編を読んでみたいと思った。2015/07/28
redbaron
11
色気があってなまめかしく、なんとも不気味な存在のヒトのお話中心。お話にでてくる「まぐわう(まぐあう)」、良い言葉だと思うけど。セックスなんて書くと味気ない。「目合」って「交って」、出来たクリチャーを「媾」って…ただ、「蛤い」という字は現在には通じないなw『二人の母』が辛かった。2015/04/29
藤月はな(灯れ松明の火)
11
最初の話でこんなにも呆気に取られた短編集は今までお目に掛かったことがありませんでした(苦笑)作者の人生や人生観を手本にして書かれているためか、文学賞や料理屋、死に至るまでの期間を待っている話が繰り返されていました。2011/05/08
行加
10
車谷さん初読み。「不思議な話」というよりは「やりきれない話」でしたね…(^_^;) 車谷さんの私小説と思えるようなお話もあって、読んでてどんよりしてしまいました…; どこか百間先生の「冥途」を連想させる雰囲気も。だけど、気力がないともう読めないかもしれません;2016/03/13
三柴ゆよし
7
掌編小説集。よくも書いたな、こんなヘンな小説ばかりを。畢生の全集三巻を出版し、この人はこれから何処へ行くのだろうと心配してもいたのだが、どうやら杞憂だった。蓋を開けてみれば、いつもの長吉ッつあんで一安心。人間嫌いの必読作家、車谷長吉には、まだまだ死んでもらっては困るで、ほんま。2010/10/04