• ポイントキャンペーン

先生のあさがお

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ B6判/ページ数 195p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784163294704
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

出版社内容情報

見知らぬ女からもらった朝顔の種を育てるうちに呼び起こされる、先輩医師の記憶。山の自然のうつろい、生と死を見つめる3つの作品。

内容説明

亡きひとたちに支えられ、生きのびて在るわが身…。プールから自転車で帰る途上、田んぼの十字路で出会った女。以前に見た覚えはあるが、名も素姓も想い起こせぬその女にもらった「先生のあさがお」の種。あさがおの先生といえば、四年前に逝ったあの上品な老人しかいないはずだが…。浅間山と八ヶ岳にはさまれた信州の秋景のなかで「わたし」をかたどる記憶のあいまいさに寒ざむと立ちつくす。他者の死に深く関わる医業で疲弊し、自裁の崖っぷちまで追われた身が、ひとや猫や自然に救われ、かろうじて生きのびた、いま。妻と分かちあう平凡で危うい初老の日常を静謚な筆致で描く表題作ほか「熊出没注意」「白い花の木の下」を収録。信州の自然を背景に、ひとの生死のあわいを描く最新作品集。

著者等紹介

南木佳士[ナギケイシ]
1951年、群馬県に生れる。現在、長野県佐久市に住む。1981年、内科医として難民医療日本チームに加わり、タイ、カンボジア国境に赴き、同地で「破水」の第五十三回文學界新人賞受賞を知る。1989年「ダイヤモンドダスト」で第百回芥川賞受賞。2008年『草すべりその他の短篇』で第三十六回泉鏡花文学賞、翌年、同作品で芸術選奨文部科学大臣賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

新地学@児童書病発動中

124
南木さんの医者としての日常を静謐は文体で描いた3篇。日常といってもリアリズムではなく、死者らしき人たちが出てきたり、時間軸にこだわらない構成を取って物語自体に厚みがある。医者として絶えず生と死に向かい合っている経験がどの小説にも生かされており、医学も文学も人の死という圧倒的な現実の前では無力であると言う諦観を感じた。だからと言って投げやりになるのではなく、あらゆる命の愛おしさを渾身の力を込めて書いていることが伝わってくる。表題作に出てくる可憐な紫のあさがおのイメージが忘れがい印象を残した。2016/01/31

mike

20
 医師であり、作家である南木氏の私小説。過酷な労働環境により、心を病んでしまったらしい。私には、この方の文体が合わなかった。一文が長く、洋書を翻訳した様な回りくどさが私の頭を悩ませる。南木氏が連れ添った妻は非常にできた方なのだと、読んでいて良く分かる。信州の自然の描写が素晴らしく、行きたくなった。2021/10/22

ぷく

16
今、こうして南木佳士に出逢えたことにほっとした。『こぶしの上のダルマ』の余韻に浸りながら、ページをめくる。独特の文体にも慣れ、自分の中でゆっくりと咀嚼できる喜びを感じる。 ビブラートをかけないささやきのような言葉が、大切にそこへそっと置かれたような言葉が、優しく心に響いてくる。医師という視点から、自らに厳しく、それは時に自虐的に、時に弱々しくもあり。また、職業柄、常に死が身近にあることへの戸惑いや恐れを、躊躇なくさらけ出す。こうして生きていていいのだと思わせてくれた、大切な一冊。 2019/09/01

ジュースの素

8
3つの短編から成る。どれもそう思えたが、現在と過去の出来事がふわふわと交互に現れてなんだか掴みにくい内容だった。全くの私小説で今までの作品では一番曖昧な感じだ。南木さんの本が好きなだけに、この本の取り留めの無さが少し残念。2020/03/03

はれ

3
南木佳士さんの作品は、2年くらい前に初めて読んで以来、ぽつぽつ目に入ったものを読んでいます。最初は、読みにくいなぁと感じたけど、今ではこの文体、雰囲気にも心地よさがあり、自分の変化を感じています。2017/08/06

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/631627
  • ご注意事項