内容説明
定年を迎えた佐竹は、妻と理想郷“ゆうとりあ”に移住するが…。“非会社員生活”の理想と現実をコミカルに描く、傑作長篇。
著者等紹介
熊谷達也[クマガイタツヤ]
1958年、宮城県生まれ。東京電機大学理工学部卒業。中学校教員、保険代理店業を経て、97年、『ウエンカムイの爪』で小説すばる新人賞を受賞。2000年、『漂泊の牙』で新田次郎文学賞、04年、『邂逅の森』で山本周五郎賞、直木賞をダブル受賞する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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しょこ
35
定年退職後、田舎でのんびりと…まるでテレビ朝日の『人生の楽園』を見ているような感じだった。あの番組ゆるっと見れて好き☆ でも、テレビで見えるのはやはりいい側面ばかりなのだろう。本書では、田舎生活の理想と現実に悩む夫婦が描かれていた。老後はのんびりのはずが、都合が悪い事が起こり返ってストレスを抱えたりと、出てくる人たちの感情が、読みとりやすく、また、いろんな立場の人が描かれていて納得したり、なるほど…と思ったりしながら読んだ。人間が自然に求めるもの、求め過ぎているもの…↓続2016/10/30
あっ!chan
35
仕事以外に打ち込めるものは何がある?子供が自立したら生きがいは何?奥さんを大事にしてきた?でも蕎麦打ちはやっている...ということで、妻から「面白いから」と勧められて手にした本。還暦を迎え退職も秒読み段階に入って主人公と同じ立場にいる自分にとって、身につまされることもいっぱい。「ゆうとりあ」という限界集落に移住した主人公が、野生動物と遭遇して最後に出した「人と人、人間と自然の付き合いはいい意味での曖昧さを許容出来るくらいがいいなぁ」という答えが熊谷さんらしい(実は邂逅の森しか読んでいないけど(笑))...2016/10/13
うわじまお
32
出版も設定も2000年代。60歳定年を迎えたことをきっかけに、地方へ移住した夫婦が、地域交流と自然の驚異にさらされながら、この場所で生きていく決意をしっかりと固めるまでの物語。熊、イノシシ、日本猿との攻防が熊谷さんらしさでしょうか。また、シニア夫婦の関係性あれこれの話もなんだか腑に落ち、役立ちました。いい老後を迎えたいものです。2024/09/30
シュラフ
23
定年後の人生の選択肢は、起業する・趣味に生きる・田舎暮らしをする、の3パターンか。定年まであと10年を切った我が身として他人事とは思えない小説である。主人公は定年後に特段やることは決めていなかったのだが、妻が田舎暮らしを言い出したことから"ゆうとりあ"に移住して十割そばの店を開くのが夢。同じ移住者たちとの人間関係、田舎の慣習との折り合い、せっかく育てた畑への野生動物の来襲、などなど主人公のセカンドライフは安泰ではないものの、それはそれで充実した日々。いくつになっても夢に向かって生きることの素晴らしさよ。2015/11/17
B-Beat
21
◎都会にマイホームを持つ定年退職した夫婦が終の棲家としてそして自然との共生を実現しようと目論んで北陸地方のある町で売り出された「住宅地」に移り住む。しかし実際に居住してみたが思惑通りに事はすんなりとは運ばない。そんな主人公の悪戦苦闘ぶりが次から次へと描かれる。それは何とも微笑ましくもあり親近感を呼び起こすものばかり。最後には野生派・自然派の熊谷さんらしい落ち着かせどころというか単にセカンドライフのガイドブック的領域を超越した心意気が明示され読後感はすこぶるいい。2013/05/29