内容説明
上ゲ屋、保チ屋、目付…吉原を陰でささえる異能の男たち。妓を遊女に仕立て上げ、年季半ばで磨き直し、合間にあって妓の心を見張り、間夫の芽を絶つ。裏稼業を通して色と欲、恋と情けの吉原を描き切った鮮烈なデビュー作。
著者等紹介
志川節子[シガワセツコ]
昭和46(1971)年、島根県生まれ。平成5(1993)年、早稲田大学第一文学部を卒業。会社勤めのかたわら小説を執筆し、平成15年に「七転び」で第八十三回オール讀物新人賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ann
48
吉原の延長で生きている、生かされている、人間模様を垣間見れる連作?短編集。「白糸の郷」は哀しいけれど、好きなお話だった。ただ、全体的に私には読みづらい文章だったかもしれない。2016/11/18
天の川
34
華やかな吉原を裏方として支える人々がいる。虚々実々の世界は夢のように美しくあるために、一皮剥けば残酷だ。女郎を仕込む持チ屋、モチベーションを上げる上ゲ屋(どちらも架空の職分)、恋文の代書屋、植木屋らの織りなす連作短編は、見事に最初と最後が結びついていく。人はどこで間違い、どこで踏み止まり、どう気持ちの折り合いをつけて道を歩んでゆくのか…。切なくて余韻の残る本でした。2019/02/10
baba
22
理不尽な吉原で生きる女性と植木屋、絹織物などそれにまつわる人々の連作集。初めは思いもよらぬ展開で、この手の話しは苦手で途中で止めようかと思うほど。大門を飾る桜を育てる人々の話しで少し救われる。連作最後に初めの章の登場人物が出てくるが、何とも切なく後味悪い読後感でした。2014/06/20
Sato
20
吉原を舞台にした小説は、売られて来た妓が主人公のものが多いが、本書は花魁の他、化粧品、植木、着物、その他裏稼業など江戸時代の巨大な歓楽街吉原に出入りする様々な業者の吉原での生き様が書かれている。自らがまたは家族など他の誰かを生かせるために吉原で働き生きていく者たち。単に男女の仲だけではなく、親子や兄弟など家族愛テーマになっている。短編集であるが、それぞれの登場人物がどこかで繋がっていて、最後はぐるりと一周する構成はなかなか見事である。吉原に灯る明かり、人の賑わい、曲輪の中での花魁の仕草など描写も細やか。2018/04/19
バニラ風味
18
江戸の吉原には、芸妓や花魁だけでなく、それらに技能を仕込む者、取り締まる者たちも存在する。親に売られたり、そうするしかなく、吉原で働くことになった女たち。その裏にある、恨みや諦め、儚い夢などが感じられた。幼い頃、吉原に出すしかなかった娘を密かに想う母親。その息子が姉を探しに吉原に行く「白糸の郷」が心に残った。2021/02/28