内容説明
鳥に変身した男をめぐる惨劇を描いた文學界新人賞受賞作「いやしい鳥」、絶滅したはずの恐竜に母親を飲み込まれた女性の内面へ踏み込んだ「溶けない」、愛とヴァイオレンスが奇妙に同居する「胡蝶蘭」の三作を収録。
著者等紹介
藤野可織[フジノカオリ]
1980年、京都市生まれ。同志社大学大学院美学および芸術学専攻博士課程前期修了。2006年、「いやしい鳥」で第103回文學界新人賞受賞。京都市在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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cryptoryou
45
「いやしい鳥」「溶けない」「胡蝶蘭」の3編、全ての物語において、読んでいるうちに、妄想と現実の狭間に漂う悪夢の中に、引き込まれそうな気がしてくる。それなのに、文章の中に独特な空気感があって、不思議とキュートに感じられ、惹きつけられる。物事の捉え方が面白い作家さんだなと思います。2015/10/20
*maru*
44
パラレルワールドかな、ここ……。さて、藤野さん6冊目は3話収録の作品集。3人の視点で描かれた、ぎすぎすヒィヒィな展開がたまらないサスペンスタッチの表題作『いやしい鳥』。 不安定すぎる。今まで読んだ藤野さんの物語の中でもトップクラス。私の思考が溶けてしまいそう『溶けない』。 その優美な佇まいにうっとり。奥ゆかしさと大胆さを兼ね備えたピンクの胡蝶蘭の花言葉知ってる?「あなたを愛します」…怖い…怖いよ…『胡蝶蘭』。全編ホラーより怖いよ。中でも『溶けない』が優勝。わたし初めてですみたいなこの感じ。お願い伝わって。2020/02/20
らむり
33
面妖で不思議で残酷…。これぞ藤野ワールドですね。こういうお話大好きです!2014/01/19
いちろく
32
紹介していただいた本。日常と非日常の中間、常識と非常識の狭間を観せられたような不思議な感覚の三編。独特な句読点の使い方や作品構成もあるが、著者の創る世界観が読めるのだけれど上手く汲み取れなかったのが、本音。読んでいる最中、常に私の中の中間や狭間の軸が揺れる感覚だった。良い悪いではなく、解る解らないではなく、作品として消化出来るか出来ないかの違いに近い? 著者の提示を読者側が好きに受け止めてください、と突きつけられた感覚。でも嫌いではなかった作品。他の方の意見を知りたくて、久々に読メの感想を色々拝読した。2022/05/29
ももっち
31
3編の短編集。どれも不条理でグロテスクで、そのくせ、馴染みの良い不思議な世界。読んでいると現実からいきなり超現実に引きずり込まれてしまう。鳥を食べて鳥人間となった不躾で非常識な学生と非常勤講師との攻防とその異変を感じ注視する隣りの主婦。母を食べた恐竜は、成長した娘の前に再び現れる。食虫植物のような、意思を持った動物的胡蝶蘭。すべて穏やかなホラーだ。表題作のゲロと羽毛と血と異臭で気持ち悪いことったら!でも、そんなことになる経過に自然と順応する私がいる。他もいいが、私程度では作者の寓意の全ては計り知れない。2016/02/28
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