出版社内容情報
欲望の限りをつくした弟は、報われずに死んだ兄の遺灰をもって宇宙へと旅立った。拝金に染まった現代中国をブラックユーモアで描く。
内容説明
問題児だった弟は、商機をみつけ大富豪に。実直だった兄は、職を失い落ちぶれる。処女膜美人コンテストに豊胸クリーム行商。欲が欲をよぶ開放経済の荒野の果てに、兄と弟がみたものは。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
TATA
34
上下巻読了。まあ、なんというのかスピードとパワーで押し切られた感じ。文革から現代中国まで経済の興隆とともにその流れに乗る者、乗れない者。結局この国っていうのは欲望に忠実に生きることが一つのモデルなのかなと思わされる。そこに行き着けないものは失意のうちに消えていくのかと。様々な風刺が含まれていることは分かったけれど、意外にも悲劇で終わったストーリーに極めて複雑な読後感だけが残りました。読み終わって考えてみると好きな人物一人もいないわ。2024/12/30
アイアイ
26
どん底の貧しい弟リーグアントウが廃品回収ビジネスを始め様々な事業で成功する一方、金属工場でリストラを受けた兄ソンガン。底なしの有権者となったグアントウと反対に、様々な職を転々として肺を病むソンガン。何度もグアントウが助けようと歩み寄り、会社の副総裁になれというのに病の治療費を稼ぐために妻リンホンを置いて詐欺師について出稼ぎにいく。ソンガンが一番好きな人物で900ページも彼がいたから毎日読んだのに・・これは激怒も分かる。読めばソンガアアアアン!!!!!と叫ぶ本。▽図書館2016/02/23
taku
15
相変わらず猥雑でエネルギッシュ。我らが劉鎮の町と人々が、喜怒哀楽溢れる舞台と背景を彩色する。綺麗な色は少ないけど、開放経済篇は文革後の時代を滑稽さで笑い飛ばすようなユーモアがある。突き進み成り上がる弟の姿は痛快。反して足元に転がる悲劇。兄の零落は憐れみを通り越して憤りを覚えた。なぜ夫婦ともに幸せになれる選択ができないのか。ただ、これは愛情の物語だ。家族の、夫婦の、そして深く大きな兄弟の愛情を涙と笑いで描いた物語。いかにも現代中国文学といった様で満足。2023/06/19
葵
12
あらゆる欲望において、李光頭の言動は極めてクリアである。対して、宋鋼はこれっぽっちの野心も負けてたまるかという意地も湧いてこない。強すぎた弟と優しすぎた兄。金欲、性欲、出世欲、物欲が露悪趣味と言っていいほど徹底して書き殴られている。とてつもないパワーに圧倒されっぱなし。読んでいる間は麻薬的快楽を伴った。中国はもう色んなものが桁外れ。文革篇に関しては、よく中国本土で出版にゴーサインが出たな。開放経済篇は一見喜劇だが、文革篇より悲劇だと感じた。今まで読んだ本の中で間違いなくトップ5に入る。超超超!最高だった!2019/05/23
spatz
7
後半は喜劇。ドタバタ。喜劇の中に大きな悲劇。 十億人が激怒! とみかえしの宣伝文句が踊る。2022/05/29