出版社内容情報
実家は町の下半身と揶揄される「さかえ通り商店街」のスナック。そこで働く男は、別れた妻が入院し、娘を預かることになったが。
内容説明
町の下半身と揶揄される南口の「さかえ通り」商店街で実家の水商売(スナック経営)を手伝うバツイチ男。元妻が入院したため、離婚後会っていなかった思春期の娘と一緒に暮らし始めることになり、同棲中の恋人も追い出す。が、そう簡単に親子の距離は縮まらない。それどころか勢いあまった男は娘に手を上げてしまう。そんな中、元妻の病状は悪化していた…。
著者等紹介
伊藤たかみ[イトウタカミ]
1971年兵庫県生まれ。95年早稲田大学政経学部在学中に、『助手席にて、グルグル・ダンスを踊って』で第32回文藝賞を受賞しデビュー。2000年『ミカ!』(理論社)で第49回小学館児童出版文化賞、06年『ぎぶそん』(ポプラ社)で第21回坪田譲治文学賞を受賞し、同年『八月の路上に捨てる』で第135回芥川賞を受賞する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おしゃべりメガネ
158
マズい…、かなり想定外に超感動してしまいました。やっぱり家族愛、夫婦愛、そして親子愛と3拍子揃ったら、そりゃあ無敵ですよね。別れた妻「翔子」からのお願いで小6の娘「晶」を預かることになった飲食店経営者の「正人」は悪友たちのフォローに支えながらも、離れていた娘との関係をゆっくりと緩和させていきます。しかし、「翔子」は病に侵されており、「正人」の振る舞いが涙を誘います。自分に正直に、まっすぐに娘を、友人を、そして家族を愛する「正人」に涙が止まりません。数ある伊藤たかみさん作品でも、最も好きな作品になりました。2016/02/09
ゆみねこ
63
伊藤たかみさん、初読み。読み友さんの感想から手にしました。元妻の入院・手術のために離れて暮らしていた12歳の娘「晶」を預かることになった正人。田舎の商店街で水商売を営む正人の家族や友人たちと、母の病の詳細を知らずにやってきた晶。思いがけず良いお話で読み心地は上々。あや子さんが良い人で良かった! 2016/02/23
taiko
58
元妻の入院で、別れた娘晶と一緒に暮らすようになった正人。6年振りの同居に、ぎくしゃくしていた2人は、正人の周囲の人達との関わりの中で、親子の関係を取り戻していく。…泣きました。晶ちゃんには、かなり過酷な現実。でも、正人との再開、あや子さんとの出会いが、彼女を随分と楽にしてあげたのだと、何度も胸が熱くなりました。正人と彼の周りの人は、一見怖い人達ばかりだけど、誰よりも人情み溢れ、温かい人達。晶ちゃんは、強い女性に成長することでしょう。伊藤たかみさん、ホント外れなし。大好きです。2016/04/03
ゆきちん
45
元妻が入院したため長く会っていなかった娘晶と生活する事になった正人。改造シーマを乗り回し、スナックを経営し、舎弟がいるあかんやつ。12歳の娘に向かって「永久歯は生えたか」と挨拶する不器用ぶり。ギクシャク始まった2人の生活。正人の恋人あや子。思わしくない元妻翔子の容態。バリバリの関西弁で、独特の言い回しなど面白いのに、深いテーマでした。晶のこれからの人生に幸あれ。2018/05/19
巨峰
36
心のちいさな襞まで丁寧に描かれた良作。12歳の少女は母の手術のため、離婚して随分長い間あっていなかった田舎町の父の元で過ごす。環境の違いにとまどいながら。それなのに母の具合がどんどん悪くなっていく……父娘をとりまく人たちがまたいいんだよなあ2013/09/30