内容説明
何が起きていたのか?何が起きなかったのか?美しい姉妹の間に迫る、逃れがたき葛藤。
著者等紹介
寺坂小迪[テラサカコミチ]
1978年、東京都生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。2004年、「ヒヤシンス」で第99回文學界新人賞島田雅彦奨励賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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かりさ
5
表題作「湖水地方」ともう1編「シャルル・ド・ゴールの雨女」どちらも背景に水の音がさわさわと滴るよう。物語はただ静かに波紋を広げるだけでそこに浮かべた舟が大きく揺れるほどの波はないけれど、するりと身を滑らせて水の底に落ちていくかもしれない、その深さは思いのほか深くて暗い穴にひたすら落ちていくような不穏さもあり。透明感のある文章の裏側で、姉妹の間で起こる感情の蠢きと葛藤。静かな湖面の下でぬらぬらと黒い影がよぎる。美しくもきりきりとするような物語でした。情景がとても綺麗で心地良い。2009/05/30
きのこ
3
香夏子は、父の探していたものと、自分の行く末を重ねて考えていたのだろうか。静かに見える湖の下では、いろんな感情が渦巻いている。静かで透明。荒れ狂う感情を内に秘めた感じ。2009/03/08
chiro
2
しーんと、きーんと、寒々しい静かな印象がとてもよいです。2008/12/31
ヤ・ミー
0
「湖水地方」「シャルル・ド・ゴールの雨女」の2編。どちらも静かな景色の中主人公の心の中・感情が揺れる。あいまいに終わる。丁寧な文章。でもちょっと退屈かな。2016/10/25
猫のゆり
0
表題作は、幼い頃の心象風景、姉妹の細かい心理描写など、上手いとは思ったけど、こういう話自体あまり好きじゃないので微妙だった。同時収録の「シャルル・ド・ゴール~」の方が好み。記憶の中の叔母のイメージが徐々に変わっていくところ、ジャングルジムの中のオブジェ、手渡せなかった手紙・・など心のどこかに引っかかる感じがとてもよかった。2009/06/18