出版社内容情報
バリケードのような家に住む姉夫婦、妻殺害をネットで依頼した愛人の心の軌跡など“三面記事”の向こう側を鮮やかに描いた小説集。
要塞のようにトタンを積み上げた異様な家に住まう夫婦の秘密「愛の巣」、気軽に付き合い始めたはずの男に身も心も囚われた女が択んだ最後の手段「ゆうべの花火」、荒廃する家庭を半ば放棄して家出少年に声をかける主婦の軌跡「彼方の城」など六篇。
誰もが滑り落ちるかもしれない“もうひとつの”記事の向こう側。現実の記事から著者が幻視した物語。
内容説明
私は殺人を依頼しました。恋人の妻を殺してほしいと頼みました。誰もが滑り落ちるかもしれない記事の向こうの世界。現実がうみおとした六つの日常のまぼろし。
著者等紹介
角田光代[カクタミツヨ]
1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部卒。90年「幸福な遊戯」で第九回海燕新人文学賞、96年『まどろむ夜のUFO』で第一八回野間文芸新人賞、98年『ぼくはきみのおにいさん』で第一三回坪田譲治文学賞、『キッドナップ・ツアー』で99年第四六回産経児童出版文化賞フジテレビ賞、2000年第二二回路傍の石文学賞を受賞。03年『空中庭園』で第三回婦人公論文芸賞、05年『対岸の彼女』で第一三二回直木賞、06年「ロック母」で第三二回川端康成文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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ふじさん
83
実際の事件を発想の発端にした、三面記事の向こう側を鮮やかに描いた短編集。妻の女をネットで依頼した愛人の心の軌跡、16歳の高校生と38歳の女の痴話、新任の若い教師との出会いと別れ、二つ違いの姉妹の葛藤等。一番、辛い作品は、「光の川」で母親のボケていく姿のリアルさ、それに翻弄される息子、日本中で繰り広げられる高齢化社会の現実が読んでいて辛く悲しい。「愛の巣」は、仲良かった姉妹はそれぞれ夫婦仲良く生きようとするが、辛い結末が待っていた。出てくる女性が、何故か皆不幸を背負っている感じが読んでいて、心が痛む。2025/05/07
団塊シニア
79
妻殺害をネットで依頼した愛人の心の軌跡を描いた「ゆうべの花火」が秀逸である、男女の力関係の逆転、登場人物一人一人丁寧に描写し物語を進める手法が新鮮で一気に読める作品です。2013/07/28
machi☺︎︎゛
75
フィクションなんだけど、元ネタは実際にあった新聞にも載った事件。それぞれのタイトルにある三面記事を読んだらあぁそんな事件あったなって思い出す。最後の介護の事件は鮮明に覚えていて、今の時代同じ悩みの人は多いだろうなって思った。普通の当たり前に暮らしている毎日でも1つ踏み外すと、全く違った毎日になってしまう。 2018/09/20
うどん
64
一気読み!!角田さんの小説久しぶりに読みましたがやっぱり面白い!実際にあった話なんですね…。2019/03/04
wanichan
55
三面記事を基にしたフィクションの短編集。事件になるまでの人間の心の変遷の描写が巧みで、まるで事実だったかのような小説が作れる角田さんの想像力の素晴らしさを感じた。どの話も読後が悪いが、これが生身の人間の感情の一部だと痛感した。2015/08/14
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