出版社内容情報
江戸中期、西国の地方藩で同じ道場に通った少年二人。不名誉な死を遂げた父を持つ藩士、源五の友は、いまや名家老になっていた。
★第14回松本清張賞を受賞した本格時代小説。月ヶ瀬藩の郡方・日下部源五と、名家老と謳われる松浦将監。幼なじみでありながら進む道が分かれ、絶縁状態にあった二人を、藩政をめぐる暗闘が二十年ぶりに結びつけた。狙う者と狙われる者として ――。父の仇、女への淡い思慕、秘剣、一揆など胸躍る多彩な要素を展開させながら、男の友情を爽やかに描ききった快作。
内容説明
少年の日を共に同じ道場ですごした家老と郡方役。地方の小藩の政争を背景に、老境をむかえた二人の武士の運命がふたたび絡みはじめた―。第14回松本清張賞受賞作。
著者等紹介
葉室麟[ハムロリン]
1951年北九州市小倉生まれ。西南学院大学卒業後、地方紙記者などを経て、平成17年「乾山晩愁」で、第二九回歴史文学賞を受賞し、作家デビュー。『銀漢の賦』で、第14回松本清張賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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それいゆ
80
いい話でした。葉室さんの作品は、読後感がよくてほっとした気持ちになります。天の川のことを銀漢と表現していますが、美しい感覚と心の中にしみ込んで来る響きがあり、作品そのものに品位を与えています。映画「蜩ノ記」を特集したキネマ旬報秋の増刊号を購入しました。その中に「蜩ノ記」で初めて葉室麟の世界を堪能した方へ、次なる一冊の参考にということで、春風伝、無双の花、恋しぐれ、橘花抄、いのちなりけり、と「銀漢の賦」が紹介されています。「いのちなりけり」は水戸光圀、「恋しぐれ」は与謝蕪村の話です。読んでみようと思います。2014/10/27
文庫フリーク@灯れ松明の火
72
漢詩で銀漢と呼ばれる天の川。冴えざえとした冬の夜空を眺めてみよう。今や頭髪に霜を置く年齢となった私に、思い浮かぶ友の顔は幾人有ろうか。身分も家格も関係無かった幼なじみ3人。一揆の惣代として処罰される者有り。一揆の対応足掛かりに藩の主導者として伸し上がる者有り。友の遺志を継ぎ、鬼とそしられながら新田開発に勤しむ者有り。いずれも不器用でありながら漢(おとこ)の字が似合う生きざま。藩を揺るがす国替えの謀略に、今や老いた悪たれの絆は捨て身の反撃に出る。わずか250ページと思えない時代小説の佳作でした。2011/12/13
kazu@十五夜読書会
55
少年の日を共に同じ道場ですごした幼馴染3人のたどる人生。家老の松浦将監と平侍の日下部源五は親友同士だったが一揆の惣代となる十蔵のことで源五から断絶する。葉室さんの作品としてはページ数が少ない作品ですが、男の友情を淡々と描く良い作品。2013/05/27
くりきんとん99
45
身分の違う幼馴染みの三人が、大人になり、それぞれの立場で自分のすべきことをやりとおそうとする姿、そして50を過ぎても続く友情に感動。この時代の生きることの難しさを学べた作品。やっぱり葉室さんの作品てスゴイ。2012/07/02
ねむねむあくび♪
42
図書館の本。葉室さんらしい、しみじみとした良い作品であった。壮年の男の友情が清々しい。飄々と逞しく生きてきた源五と出世し藩の未来を担ってきた蒋監の人生が、また交わり、助け合う。「人はひとりで生きているのではない。誰かとともに生きているのだ」ラストもよし(笑)2013/05/24