内容説明
戦の影が迫りくる武蔵野の谷、若かりしころ伊賀の忍びとして名を馳せた男がまた奔る。かけがえのない村を、命を守るために―。
著者等紹介
北重人[キタシゲト]
1948年、山形県酒田市生まれ。仲間とともに建築・都市環境計画の事務所を設立。長く、建築やまちづくりにかかわる。1999年、「超高層に懸かる月と、骨と」で第三十八回オール讀物推理小説新人賞を受賞。2004年、『夏の椿』(原題「天明、彦十店始末」)が松本清張賞の最終候補作となり、同作品でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ゆみねこ
62
北重人さん、初読み。いやー、面白かったです!信長の伊賀攻めで国を離れた元忍びの疾風の三郎が、武蔵野の谷あいに開いた村と村人を守るため闘う。隠し金山や、風魔との戦い、風流女・桔梗等々沢山盛り込まれていて、純粋に楽しめる時代エンタメ。お勧めいただいたキムチ27さんに感謝です。2016/01/06
こおり
9
凪の部分が長く少々退屈に感じたものの、クライマックスの戦闘シーンが近づいてくると一気に盛り上がり夢中になって読んだ。北重人作品の良さは、「登場人物の魅力」と「艶のある文章表現」だと感じている。今作の主人公 三郎も、最高にカッコいい爺さまだった。若かりし頃、伊賀の忍びとして活躍した三郎。「疾風」と呼ばれた三郎も今では白髪頭の50代半ば、「白疾風」と言ったところだ。大切に守ってきた村を襲う一派を迎え撃つ白疾風の活躍を御覧じろ2016/01/11
キムチ
7
久しぶりに読んだ伝奇モノ。やはり、「純粋に」面白い。彼にとって初期に属する作品のようで、ズッキリ感は弱いかな? だがさすがに人生の達人、訴える情趣は深く、資料をよく読みこんで書かれているのが判る。 所詮は「滅びゆく」運命の忍び、太平の世に変わっていくであろう流れで一度は得た平安を捨て篠や仲間と立ち上がる三郎。最後の締めで二人のの語らいで昇華させる想いが巧み。 表紙の文体は如何にも「疾走」 読後、流れる風に乗って諸国を駆け抜ける疾風の姿がリフレインのようにめぐる。 桔梗を絡める描写は官能的、見事。2012/09/14
ワッピー
5
伊賀攻めで国を失い、忍者働きに飽いて武蔵野に隠棲する三郎に、新たに迫る火種。埋蔵金のありかを記した地図を追って、かつての仲間「礫」の蠢動、風魔の潜入など、平和な村の様相が変貌しはじめる。かつて失ったものを今回は守り通せるか?再び自らの郷の危機に立ち向かう三郎は村を守ることができるか?茅萱生い茂る古い武蔵野の林野を駆け巡るシーン、三者入り乱れての死闘となったクライマックス、そして「礫」が約束を守り、村が存続したことを示す道祖神のエピソードまで、一気読みでした。久々に爽やかな時間を過ごせたことに感謝! 2014/08/20
あかんべ
5
忍びとして数々の戦に参加し、その悲惨さむなしさを味わった三郎。谷に村を開き、苦労して落ち着ける場所を得た。そこで我欲にとらわれた者の手で平和が侵されそうになる。真に戦を避けようとするが、敵の手は村人を使い宝の地図と不正を記した帳面を奪おうとする。礫にさっさと渡してしまったらここまでに至らなかったのかも。平和を望んだ三郎夫婦は、社に道祖神になるもむなしい。2012/06/15