内容説明
「痛み」と共に生きる人びと…。主人公が選んだのは、ある女性を全面的に受け入れる「肯定の愛」だった。頭痛に苦しみながら生きている男が、長い時間をかけて、かたくなに過去を隠す妻との愛にたどりつくまで…。リアリズムを徹底的に突きつめた、真実の小説。
著者等紹介
佐川光晴[サガワミツハル]
1965年、東京都に生まれる。北海道大学法学部卒業。出版社や食肉処理場に勤めながら小説を書きはじめる。2000年に「生活の設計」で新潮新人賞を受ける。2002年に「縮んだ愛」で野間文芸新人賞を受ける。埼玉県志木市在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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おしゃべりメガネ
137
夫婦愛やお互いの在り方について深く考えさせられる作品でした。2編からなる本作ですが、表題作の何とも言えない切なくも儚い、それでいてしっかりとした‘愛’に一言では言い表せません。脳腫瘍を患い、鬱を発症しながらも、明るく献身的に支えてくれたパートナーが病をキッカケに肉体的にも精神的にも崩壊していったら、果たして自分は愛し、支え続けていけるのか。もう1作品はちょっとした浮気心が招いた‘悲劇’と‘代償’を淡々と回想で綴る話ですが、なんてことない文章に思いつつも、しっかりと引き込まれて不思議な読後感を味わいました。2015/09/20
マッピー
11
中編が二作。どちらも身体的な痛みを感じるような作品。読んでいて、あまり気持ちがよくない。そして、どう理解したらよいのかよくわからなかった。ちなみに『銀色の翼』とは片頭痛の兆候である閃輝性暗点のことで、視野の一部が真っ白になって見えなくなり、その縁の部分がジグザグにチカチカと光ることを、芥川龍之介がこう呼んだのだそうです。2020/01/06
高橋光司
5
何年か前に妹に薦められて、書棚に「積ん読」になってた本。当時芥川賞候補にもなり、村上龍が絶賛していたそうで、確かに読みごたえのある小説でした。少々暗い内容ですが、なかなかの佳作です。2016/01/24
はなみずき
3
フィクションか。こういう痛みをどう感じるのか、どう生活が成り立ってゆくのか、正直、生々しく感じたことはない。ただ事実としてまっすぐ文章を受け止めた。かえってドラマや映像化されるより、現実の描写は淡々としてるから、そこを痛々しく読まされてはいない。でも感想を描けないでいる。。。読み終えた今は。不快感ではない、でも身体が重しがのったようでぐったりと疲れた。。。。夫婦としての在り様が伝わった。2015/07/20
otmsy
3
夫婦関係とはシーソーである、と思う。一方にひどく傾くことはあっても、相手がいないことには始まらない。表題作の主人公の「わたし」と妻の場合は頭痛を支点にして乗っているが、相手の姿は見えていない。互いの頭痛が酷く、時には相手の顔すら見ることができなくなるからだ。しかも、皮肉なことに「わたし」の頭痛を引き起こす「石」が妻の心を鎮める。そのような状況下で「わたし」は頭痛の原因の「石」に向き合う覚悟を備えていく。妻を浮かびあげて均衡点を作るためには、自分の方で重さを引き受けなければいけない。そこに、夫の役割はある。2014/12/29
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