内容説明
心の底にひっそりと仕舞われていた「記憶」が、過去の「物語」に呼び起こされて、いま蘇る。不思議な感覚にとらわれる十篇のストーリーたち。現実とフィクションの区別が曖昧になる短篇小説集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
キジネコ
35
過去の事は記憶の襞に刻まれた事実であり、それが進行形で語られる今の礎で、やがて訪れ来る未来の備えだと私達は何処かで信じてきた。作家は云う、本当に其れはアナタの属する過去なのか?起きたと思い込んでいる一つ一つは妄想や夢や誰かの物語、都合よく捏造された願望でなかったと云えるのか。自信、確証を支える根拠は何処にある?と。ゆっくりと渦を描いて脳漿の海は光を失い、漂う細やかな吾脳細胞は色も方向も見失って無明の闇に遠い波音を聞く。生と死の曖昧な境界の住人、私達は何を知っていると云えるんだろう、成程此処は迷宮だ、の本。2017/01/13
takaC
22
これは小説(フィクション)なのだろうか?エッセイなのだろうか?私小説なのだろうか?どれともつかない短編集だった。2012/11/13
竜王五代の人
4
安定の阿刀田節。今作は、作者を思わせる人物を語り手に据えたもの・オマージュが多い(後ろにわざわざ引用した作品の一覧を設けている)ことが特徴。それならそれで固めればいいのに、と思わないでもない。幻想の利いた「薔薇配達人」と、お守りのようになった謎のプレゼント「遠い贈り物」が白眉か。反戦をスローガンにした「神々は笑う」はちと落ちる。2022/01/14
みゆみゆ
4
最初の一編が小説だったのでそのつもりで入っていったら、その後はエッセイ要素がふんだんに。でも、結局すべて小説らしい。読むときの心の置き所が何回もオロオロしてしまった。でも、書いてあることが興味深くて面白かった。2020/06/06
kuriko
4
本当に迷宮…。自分の頭の中でも物語が膨らんだり縮んだりしてしまった。2014/03/30