内容説明
曾我兄弟は、歌舞伎などの大衆演劇のヒーローに姿を変えた。あまつさえ、修身の教科書にのる孝行息子にもされた。しかし、兄弟には頼朝の命を狙う動機があった。兄弟の祖父、伊東祐親は頼朝の愛児を殺した。祐親はその報復を受けて、頼朝に殺されていた。八百年もの歴史に隠された「曾我物語」のせつなすぎる真実。
著者等紹介
高橋直樹[タカハシナオキ]
1960年、東京都出身。「尼子悲話」(『闇の松明』に収録)でオール讀物新人賞を受賞。『鎌倉擾乱』で中山義秀文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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榊原 香織
54
曽我兄弟異説(新説?) 2人が狙ったのは頼朝暗殺だった⁈2021/08/16
GaGa
30
曾我十郎五郎兄弟の仇討ちは子供の頃、絵本やアニメでもよく見る割とポピュラーなものであったが、昨今の人たちは全く知らないらしい。忠臣蔵は例外としてやはり敵討ちなる古い文化は現代では伝えにくいものなのであろうか?本書は仇討ちが頼朝暗殺の伏線に過ぎなかったという、よく唱えられている学説を下敷きにしたもので、丹念に構築された展開、十郎五郎の描き分けの上手さ、そして結末の寂寥感は素晴らしい。…が、仇討ちをある種の美談として聞かされてきた者としては、これも曲解なのやも知れんなあ。2011/05/27
くっちゃ
6
頼朝の最初の子で、自身にとっては孫にあたる子を殺した伊藤祐親は知っていたし、曽我兄弟のことも知っていた。でも彼らが伊藤祐親の孫だったとは…。業の深さに驚いた。そして最後の方まで、けっこう漫画チックなノリで進んでいくのに、最後の兄弟の悲惨さといったら…2019/04/13
Yoshihiro Yamamoto
1
C― 澤田ふじ子の同名の小説「天皇の刺客」を読もうと思って、間違って読みはじめてしまったので、とりあえず読んでみた。曽我兄弟の仇討ち(歌舞伎で有名)と、同じ年に失脚した源範頼、安田義定・義資親子の粛清、曽我兄弟の義兄・京ノ小次郎の誅殺を「頼朝暗殺」というキーワードで結びつけた小説。まあ、そこそこという感じ。2013/05/30
星落秋風五丈原
1
歴史上の人物には、みな永年の間に定まったポジションというものがある。 鎌倉幕府を築いた源頼朝は、武家政治の創始者として、足利尊氏(室町幕府)や徳川家康(江戸幕府)と同じ地平で語られる存在だ。 かたや曾我兄弟は荒木又右衛門や赤穂浪士とともに「日本三大仇討ち」というキャッチフレーズを与えられ、ポジションは大衆演劇のヒーローに定まった。 ポジションのない人物が、歴史に名を残すことはできない。しかし源頼朝と曾我兄弟の深い因縁が見落とされるようになったのも、定まったポジションのせいなのである。2006/04/26